「借金」は2400万円、月平均27万円もパチンコに投入
検察官は被告人の苦しい経済状況を動機として挙げた。住宅ローンの残金2000万円に加え、カードクレジットの借金が400万円もあったという。
「被告人はパチンコが好きで、会員カードを所持。利用状況を調べたところ相当の額をパチンコにつぎ込んでいたことが明らかになっています」
その金額は、2018年8月~12月の5カ月間で138万円に達している。月平均で27万円以上。勝つ日もあっただろうが、カードクレジットが増えた大きな理由はパチンコにあり、返済への焦りが犯行の引き金になったと言いたげだった。
一方、弁護人は被害者との間に示談が成立し謝罪が受け入れられていること、被害額を弁償したことのみ述べ、すぐに被告人の妻への証人尋問開始。
弁護人が言う。
「あなたはパートに出られていますね。いつからですか」
「去年の5月からです。パートの収入は月に約7万円で、生活費と日用品に使い、足りないときは主人に言って、月に3万円ほどもらっていました」
夫婦の間には子どもが3人いるので、それまでは子育てに追われていたと思われる。借金400万円のことも、今回起訴されるまで知らなかったとのこと。離婚は考えなかったのかという質問にも首を横に振る。
「子どもたちには父親が必要。一緒に借金を返していこうと思います。今後は私が家計を管理し、すべてを把握するよう努めます」
子供3人、妻は離婚する気持ちはない
サバサバとした語り口から、夫への愛情が残っていることが感じられた。夫は立ち直れる、今回の事件は出来心として許そう、と思っているのかもしれない。そうであれば、子どもたちのことを考えても、いますぐ離婚する必然性はないだろう。
しかし、攻める立場の検察は、夫婦間の愛情とは別のことを問題視していた。パチンコでの浪費である。夫のギャンブル癖をどう思っているのか。
「パチンコは、私から見てのめりこんでやっているようには見えていませんでしたし、やめてほしいとまでは思っていません。きっと……大丈夫だと思う」
ええ? こういう場合、本心はどうあれ、きっぱりやめてもらうと答えるのがセオリーなのに、根拠もなく大丈夫と言っちゃったよ。驚いたのは筆者だけではなかった。裁判長が身を乗り出し、重ねて尋ねる。