排泄介助のヘルパーは1日2~3回しか来てくれない

男性が介護をすると要介護者は厳しい状態に置かれることも多いそうです。

「さきほどお話したように排泄介助は絶対無理という方がいるわけです。その場合は訪問介護のヘルパーに頼ることになりますが、要介護のレベルと使用できる介護保険がきく範囲がある関係で、そう頻繁に来てもらうことはできません。通常は日常にせいぜい2~3回です。定期巡回訪問介護というその方の状況に合わせて複数回訪問してくれる定額制の24時間対応サービスもありますが、人手不足のため事業所が少なく、誰もが利用できる状況ではありません。ということはオムツに排泄物があるつらい状態が長く続くわけで肌が荒れてしまう心配もあります」(Iさん)

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Rawpixel)

それに加えて前述のように、状況を改善するためのアドバイスをしてくれる人、弱音をはける相手がいないため孤立し、困難事例と見られる事態に陥りやすいのです。

「介護の相談ができる地域包括支援センターなども、そうした男性介護者の危うさは認識していて、精神的なケアを目的とした何でも話し合える集まりを開催することがあります。しかし、参加される方は少数ですし、介護の悩みを語り合う場にはなり得ないのが現状です。私も出席したことがありますが、会議みたいな堅い雰囲気になってしまう。大所・高所から介護の現状を語り合うような。男性特有のプライドがあるせいか見ず知らずの相手に今抱えている介護の悩みを打ち上げられないようなんです」(Iさん)

排泄介助も「最初の2週間」を乗り越えれば何とかなる

サロンを開催する側とすれば、介護の苦しさを抱えている同士が本音を語り合うことで、辛いのは自分だけではないことを知ってもらおう、そしてその会話から解決のヒントを得てもらおうという意図があるわけですが、そうはならないというのです。

結局、解決の糸口にはならず、精神的にも楽にならない。孤立し追い詰められた状態は続いてしまうというわけです。Iさんは「男性介護者に一番必要なのはこの精神面のケアだと思います」といいます。

「家事を含め介護は続けていればなんとかこなせるようになります。排泄介助だって『絶対に無理』と言っていた人でも最初のハードルをクリアできれば実践できるようになるものです。私が見てきた経験では、しんどいのは始めて2週間ほど。それを過ぎれば慣れてルーティンワークのようになります。また、本業の仕事のほうも訪問介護やデイサービス、ショートステイなどをうまく利用することで、早退したり半休をとったりすることはなくなる。離職せずに介護を続けることができるものなのです」

「メンタルのケアはデリケートで難しい問題です。周囲を探せば、私たちのようなケアマネなど相談できる人はいる。自分に素直になって何でも話してほしいですし、SOSを出してほしいと思っているんですけどね」

男性介護者の課題は介護の悩みを誰にも話せずため込んでしまうことでしょう。これは介護の世界でも大きなテーマになっているようで男性介護者をつなぐ団体もあります。

次回はそうしたコミュニティを取り上げ、どのような活動をしているのかレポートしていきます。

(写真=iStock.com)
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