起業家が生まれる国にはディスカッション文化がある
日本の教育には、“対話力”を育てるという側面からも問題を感じています。欧米やイスラエルなど、起業家が生まれる国では小さな頃から学校や家庭でディスカッションをする文化があり、そうした経験を積んだ人はビジネスの交渉も上手ですが、日本人は遅れを取りがちです。
日本の学校では伝統的に「手を挙げて答えを言わせる」というスタイルですから、どうしても対話をする力がつきにくい。しかも、教室にいるのは基本的に同じ日本人ですから、対話をそれほど必要としないという背景もあるのでしょう。
この点、アメリカはまったく異なります。私は大学時代にアメリカに留学し、その後アメリカの大学院にも進んだのですが、学校にはユダヤ人やヒスパニックなど、多様なバックグラウンドをもつ人がいました。このときの経験は、論理では説明できない感性の違いを体得することにつながり、相手に合わせて柔軟に対話できる姿勢を持てるようになったと思います。
もちろん、日本の従来型の教育が完全に間違えているとは思いませんし、戦後の日本の成長にも大きく寄与したと思っていますが、これからのグローバル時代を生きる子供を育てるうえでは、教育の選択肢を増やすことが間違いなく必要です。
先端的な教育事情を視察
そういった問題意識から私は、アメリカなどの先端的な教育事情を視察し、自分なりに海外の教育法について学びました。この活動を続けるうちに、周りの保護者たちも同じような気持ちを抱えていることが分かってきたため、そこで2016年に立ち上げたのが「FutureEdu Tokyo」という有志団体(現在は一般社団法人)です。
立ち上げたばかりの頃は、団体として活動を継続できるのか具体的な展望は見えていませんでしたが、「誰かがやらないといけない」という感覚に動かされ、これまで続けてきました。
『センスメイキング』を読むと、政治や社会、環境、テクノロジーなどが複雑に絡み合う世界を理解するうえで、人間的な要素が最も重要であるとの指摘がありました。教育を通じて人間そのものに触れる機会を提供することは、今後、ますます大きな意味を持つはずです。