ちなみに、「チベット旅行対等法」には中国がチベットに米国人の訪問を許可する状況を毎年検証するよう米国務省に求める内容が盛り込まれ、中国が米国人のチベット訪問を制限した場合、国務省がその制限を課した中国政府の関係者の米国入国を禁止する措置を取ることになっているという。

米中関係を一言で表現すれば「冷和」

こうした判断が正しいならば、2019年の米中関係は下記の三つの特徴を持って展開されていくと予想される。

まずは、米中で展開されている激しい競争がかつての米ソ冷戦を彷彿とさせるほど先鋭化しているものの、なお「冷和」の段階にとどまると予想される。

筆者が初めて「冷和」、つまり米中間の対立が激しくなるなかでも一応の平和を保つというコンセプトで米中関係を分析したのは2015年であった。「ドラゴンスレイヤー」と称されるいわゆる伝統的な対中強硬派だけでなく、中国との融和を主張するいわゆる「パンダ―ハガー」も中国の現状に不満を抱き、米中関係の先行きを悲観視するようになったからであった。

2018年に至って、米国と中国がついに本格的な貿易戦争に突入しただけでなく、イデオロギー・価値観から軍事、ひいては文化面での対立も先鋭化した。しかし、それにもかかわらず、ただいまの米中関係がポスト冷戦時代はもとより冷戦時代よりも緊張しているが、冷戦時代の米ソ関係ほどにはなお至っておらず、なお「冷和」の段階から離脱していない(図表1)。

米中関係の「和」を支えるに当たってもっとも大きな役割を果たしているのは経済的リンケージである。過去一年来のワシントンにおいて、中国経済とのディカップリングを進めるべきとの声が強まってきているものの、製造業から金融サービス業までの経済の各方面において、米国と中国の複雑に絡まったリンケージを少なくとも短期的に切断することは難しいとみてよかろう。