金利はどっちが得? という問いの間違い
ここまで金利差が縮まると変動金利のメリットがかなり小さくなっていることもわかる。
そして固定と変動の金利差は損得の違いではなくリスクの違いである。金利変動リスクを金融機関に押し付けた分だけコストが上がる、金利差は金利変動リスクを避けるための保険料である、と考えればあとは金利差が妥当かどうかで判断すればよい。
一年ごとに変動金利が0.1%ずつ上昇した場合は? といったシミュレーションも時折見かけるが、さほど意味がない。実際に変動金利がどうなるかは全く見通しが立たないからだ。筆者は固定と変動のどちらかを強くお勧めすることはまずないが、固定金利は金利変動リスクがないので「無難」と説明している。損得ではなくリスクの有無や高低の話ということだ。
一般的に金利はマーケットに連動する固定金利のほうが先行して動く。金融緩和が終了して変動金利が上がるようなことがあれば、その頃に固定金利はとっくの昔に上昇していた、という状況になるだろう。したがって「変動で借りて金利が上がりそうになったら固定に乗り換える」という作戦は、変動金利ではなく固定金利の推移を見る必要がある。これは株を安く買って高く売る、というくらいに難しい。
そして、ここまで説明すればすでに住宅を購入し、変動金利で借りている人もどうすればいいかわかるだろう。先日のようなちょっとした金利上昇で肝を冷やし動揺しているような人は今のうちに固定金利へ借り換えたほうがいいということだ。変動金利がずっと横ばい、あるいは下がり続けるような過去の状況のほうが異常だ。35年先まで低金利が続くと考えているのであれば、それは甘すぎる想定だ。
だから変動金利は危ないので絶対ヤメロというつもりはない。そして変動金利でローンを組んで家を買う人は半数にものぼる。全期間固定や10年固定よりも格段に多い。そういった人を無視したアドバイスは現実的ではない。
具体的な対応策を考えるのであれば、すでに借りている人もこれから借りる人も「借り換えができるように常に準備しておきましょう」ということになる。これに必要なのは金利を常に見ておくことだけではない。
万が一金利が上がったら借り換えればいい……、変動金利で借りている人でこのような借り換えを全く意識していない人は皆無だと思うが、ここに落とし穴がある。借り換えは必ずできるわけではないからだ。