イノベーションに必要な“エネルギー”

イノベーションを起こすためには、顧客の課題を捉えなくてはならないと説明しましたが、もうひとつの条件があります。それが“エネルギー”です。過去に起きた産業革命では、まさにイノベーションが多発したわけですが、その背景には蒸気や石油、電気などのエネルギーがありました。こうしたエネルギーを誰もが利用できるようになったことで、さまざまなイノベーションが生まれたと考えています。

昨今は、インターネットの発達にともない、人工知能やIoTなどが生まれ第四次産業革命が起きていると言われますが、インターネットも、ある意味で新たなエネルギーです。過去の産業革命と同じように、インターネットによりこれまで解決できなかった顧客の課題を解決できるようになり、イノベーションも次々と生まれています。

イノベーションは、産業の構造そのものを変えるインパクトをもたらします。インターネットにより、Uberがタクシー業界を変えたり、Airbnbがホテル旅館業に影響をおよぼしたりしていることからも明らかでしょう。顧客の課題を捉え、そこにインターネットを掛け合わせることで、日本からもまだまだイノベーションを生み出す余地はあるはずです。

「ネスカフェ アンバサダー」はインターネット時代のサービス

ネスレ日本の場合、2012年から「ネスカフェ アンバサダー」というサービスを始めており、これもインターネットによって可能となったイノベーションです。ネスカフェ アンバサダーは、無料のコーヒーマシンを職場などに置いていただきコーヒーを提供するサービスで、今はオフィスだけでなく美容室や病院にも広がっています。

オフィスでアンバサダー(担当者)を決めていただき、アンバサダーがオンラインショップでコーヒーを注文し、代金の取りまとめもしてもらう仕組みを作ったことで、1杯約20円から本格的なコーヒーなどを楽しんでいただくことを可能としました。

以前は、通勤途中に自動販売機やコンビニで缶コーヒーを買うのが普通で、オフィスの中で本格的なコーヒーを、しかもこれだけ安く飲めるとは考えられていなかったのではないでしょうか。

同様の仕組みを、ビタミン・ミネラルを含む抹茶や、スムージーなどの健康商品を提供する「ウェルネス アンバサダー」でも構築しています。ウェルネス アンバサダーの特徴は、食事内容を人工知能で解析しパーソナルに合った商品を提供する点にあります。これも、「自分に合った栄養素を摂取する難しさ」という課題を捉え、インターネットや人工知能をかけ合わせたことで実現できたイノベーションです。