専門医になれるのは「最短でも30歳過ぎ」

第2にプログラム制の問題があります。今まではカリキュラム制でしたので、何年かかろうと決められた研修を修了すれば専門医への道が開けました。これに対してプログラム制では、決められた年限内に研修を終えなければなりません。日本は医学部が6年制で、その後2年の初期研修が必修化されています。そのため、最短でも専攻医となるのは26歳です。

例えば内科の場合なら、26歳から基本領域(基本的な19の診療科)の研修を始め、29歳でようやく2段階目である循環器内科等のサブスペシャリティの研修に入ります。専門医になれるのは、最短でも30歳過ぎです。

融通が利かないシステムで、決められた医療機関を長きにわたり転々としなければいけないのですから、結婚や子育て、親の介護等、家族の問題を考えたときに二の足を踏むのは当然です。他人の人生を「管理する」ことにもっと慎重であるべきですが、制度設計側が配慮した形跡は見当たりません。

プログラム制なのに勤務地が未定

しかも、このプログラム制、2年目では全体の38.5%(うち未定は19.0%)、3年目では同じく54.6%(同26.2%)の専攻医が「勤務地について未定または無回答」であることも分かりました。「東京都に基幹病院があるプログラム」の専攻医についても、2年目では25.6%、3年目では46.9%が「勤務地、無回答」という状況だそうです(参考:メディ・ウォッチ「新専門医制度、プログラム制の研修にも関わらず2・3年目の勤務地「未定」が散見される―医師専門研修部会」2018年12月11日)

「循環型研修」は、近隣地域での研修であったはずですが、例えば東京都の専門研修プログラムは、1年目こそ東京で研修できますが、その後は地方での研修となり、しかもその詳細が決まっていないというのです。厚労省の発表した資料「例」では、1年目が東京と福島、2年目が栃木、3年目が神奈川となっています。

専門医の質の担保には、プログラムの質の検証が不可欠です。どのようなプログラムを提供しているのか、指導医のレベルは保たれているのか、指導体制はどうか、決められたプログラムに沿って教育をしているのか、それにより専攻医に力がついているのか。そういったところをチェックするのが機構の本来の仕事なのです。それが整ったところだけが専攻医の受け入れに手を挙げられるはずです。

ところが、機構にはその検証能力が全くなく、プログラムの詳細も決まっていないのにプログラムが認められていたのです。一体何のためにこの制度は開始されたのでしょうか。プログラムの検証こそ、この制度の生命線だったはずです。さらに驚くべきことに、厚労省と専門医機構は検証なきプログラムについては放置したまま、地域貢献率なるものを計算し、専門医の質の担保より偏在対策を優先させたのです。