産婦人科希望者が0人の県も

次は産婦人科医です。産婦人科がなければ子供を産むことができません。産科医は過重労働と訴訟の多さから敬遠される傾向が続いており、産みたくても産める環境がないことが、すでに全国的な問題になっています。

さて、産婦人科専攻医の数です。なんと島根県・香川県・佐賀県では専攻医希望者がひとりもいませんでした。他にも秋田県・群馬県・和歌山県1名、福島県・山梨県・三重県・滋賀県・徳島県・高知県・長崎県・大分県2名と壊滅的な状況が続く県が多く、希望者全体で419名と、前年の441名からさらに大幅に減りました。

そして子育てに必須な小児科の希望者も全体で535名と、前年度の573名から大幅に減っています。高知県は希望者なし、島根県1名、石川県・鳥取県・山口県・徳島県2名、群馬県・福井県・山梨県・佐賀県・宮崎県・愛媛県3名と続きます。

医療を維持するためになくてはならない科への希望者が、特に地方を中心に減り続けているのです。この状態が数年続けば、上記に名前が挙がった県では、高齢の医師による高齢者の診療、つまり「老々医療」となり、早晩医療システムの維持は不可能になります。

医師の偏在対策を兼ねたのが誤り

なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

まず第1に、専門医制度が「循環型」プログラム制を採用したことがあります。循環型とは、基幹施設(主に大学病院)を中心にいくつかの連携病院が一つのグループを作り、専攻医はグループ内を循環して研修するというものです。そのグループは専攻医の負担を考え、近接する地域を想定しているとのことでしたが、いつの間にか「偏在対策のために」遠隔地も含むようになり、各地を転々としなければいけなくなりました。

専門医機構が当初目指したアメリカの制度では、単独の施設による研修が90%以上ですので、「循環型」研修はこの制度の目的である「専門医の質」とは全く関係がありません。大学病院を中心に据え、関連病院に専攻医を出す形にしたかった人たちが、システムの基本設計を大きく歪めてしまったことがわかります。結果として、専攻医は負担の大きい科を選ばなくなってしまいました(参考:厚労省HP 平成31年度専攻医一次募集の応募状況について(平成30年度の採用数との比較))。