妻の意見で狭い家でも広々とした空間に

この家を建てたエリアは比較的土地代が高く、基礎工事を見学したときは「こんなに狭いのか」と少々ガックリきました。しかし、1階の和室のふすまを開けると、リビングダイニングが広々と一望できる構造にするなど、狭くても広々とした空間を感じられる工夫をしていました。そのおかげで、実際に完成した家は、天井も高く狭さを感じない空間になりました。これは、妻の希望を反映した設計です。

写真=iStock.com/Bulgac

また、外観もこだわりました。というのも、周辺の家の壁が白ばかりであったことと、私が膨張色よりも引き締まった色が好きなものですから、外壁は黒に近いグレーにしました。家の前に駐めている自家用車のミニクーパー、趣味で乗っている大排気量のトライアンフ製バイクとも調和する色で、とても気に入っています。明るい外壁に比べて、ダークな外壁のほうが、10~20年が過ぎたときに古びた感じがしないだろうと考えた結果でもありました。

上棟式では鉄骨に書いた「凡事徹底」

ほかにも、玄関に工夫をこらしました。ふつうわが家ほどの建坪の場合、敷地を最大限に活かすために、目いっぱい土地を利用した設計で家の前面に玄関をつくりますが、あえて玄関を横向きにして奥に配置し、家の脇に8メートルほどの通路を設けました。玄関を前面に置くと、道路に面しているので、出入りのたびにプライベートな空間が外から覗かれてしまいます。横向きの玄関は、設計担当者からの提案でしたが、防犯対策にもなりますし、会社の行き帰りに通路を通るとき、仕事とプライベートのオン・オフの切り替えができて、よかったと感じています。

私も妻も、それぞれ田舎に実家がありますが、将来的にはこの家で先祖代々を祀ることになるだろうと考えて、家には最初から仏間のスペースもつくりました。今は物置きとして使っていますが、仏壇専用のスペースが最初から用意されていることで、田舎の父も安心してくれたようです。

このような想いを込めたわが家の上棟式のときには、思い出があり、鉄骨に「凡事徹底」と筆で書きました。この言葉はわが社の会長の口癖で「当たり前のことを当たり前に、徹底的にやること。それが非凡につながる」という意味で、昔から私も好きな言葉です。