ポピュリズム政党が躍進なら、バラマキ政策で金融市場が動揺
18年5月の欧州議会選でポピュリズム政党出身者が増加すればするほど、欧州議会の運営は混乱していくと予想される。欧州議会での立法手続きは滞ることになるし、EU予算の成立も難航することになるだろう。このような形で欧州議会が停滞に陥れば、EUの統合深化など望めるわけがなく、むしろそれに逆行する流れが強まると警戒される。
立法手続きが滞れば、EUによる行政が停滞することになる。予算の成立が遅れると、EUによる所得再配分政策、具体的には共通農業政策や地域支援政策などが立ち行かなくなる。何れもEU景気を下押しすると予想されるが、特に恩恵を強く受けている南欧諸国に対して深刻な悪影響が及ぶことになる。
ポピュリズム政党出身議員の存在が無視できなくなれば、最多会派であるEPPは彼らを懐柔するためにバラマキ色が強い政策を容認せざるを得ないだろう。そうなればEUの財政規律は緩み、金利が上昇して金融市場が動揺すると危惧される。他方で、EU全体で取り組む必要がある危機対応などが遅れる危険性も強まる。
またポピュリズム政党は内向き志向であるため、かつてのギリシャの様に加盟国が経済危機に陥った場合、その支援に対して生じる費用負担を拒否する可能性が高い。そのため彼らが欧州議会で存在感を高めるほど、EUとしての危機対応が遅れるリスクが大きくなり、問題がEU全体に広がる恐れが出てくる。
さらに、欧州議会選でポピュリスト政党出身者の議席が増えるほど、加盟各国におけるポピュリスト政党のプレゼンスが高まることになる。彼らの声が大きくなれば、その分だけ各国の国政運営は難航すると予想される。欧州議会選の結果は各国の政治の動きにも無視できない影響を与えることになる。
あくまで次期欧州議会選のメインシナリオは、ポピュリズム政党出身者の議席増は避けられないものの、中道右派のEPPが最多会派の座を守るというものである。ただ独仏リーダーの求心力低下が顕著な中で、ポピュリズム政党出身者の存在感が無視できないほど高まる可能性も否定できないため、その動向には注視したいところである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 研究員
1981年生まれ。2005年一橋大学経済学部、06年同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を経て、12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。現在、調査部にて欧州経済の分析を担当。