思い出すことで、怖くなくなることも
さらに、悪夢を見なくなるための効果的な方法はあるのでしょうか。その1つが、現実に自分が置かれている状況と、夢に出てきたシチュエーションや登場人物を重ね合わせながら、自分が不安に思っていることやストレスを感じていることを分析する方法です。夢に出てきている状況は会社なのか、家庭、学校なのか。また、自分が何歳くらいなのかが手掛かりになる場合もある。今の自分なのか、それとも若いときの自分なのか。
夢に出てくるのはだいたい、一番気になっていて未解決のことです。そして、問題に対処できたらその夢は見なくなる。つまり、自分の心の中で、これは完結したと感じると、その夢はもう見なくなるんです。
怖いけれども、悪夢を見た後、その内容を生々しく思い出すこともとても大切です。2つめの方法は「エクスポージャー」という行動療法の技法なのですが、目的は、夢で見た恐怖に何度もさらされることによって気持ちを慣れさせてしまって、その感情の強度を減らしていくこと。例えば怖かったことを人に話していると、少しずつ怖さが緩和されてくることはありませんか?
それは、話すことによって、助言をもらったり、支持してもらったりといったサポートの影響もあるけれども、人に話しながら自分の中でまざまざとイメージして思い浮かべることで、恐怖が緩和されているのです。すると、同じような悪夢を見たときに、前ほど感情が刺激されず、不快な気持ちを軽減させられるのです。
「オチ」は自分で都合よく、書き換えてもOK
3つめの方法は、起きたあとに、夢の筋書きの最後を変えてしまうこと。「イメージリハーサルセラピー」といって、アメリカ睡眠医学会のガイドラインでは、薬を使わない悪夢の治療法の中でナンバーワンに挙げられています。これは、見た夢の内容を思い出していき、最後の結末をポジティブ、あるいは現実的なものに書き換えてしまうのです。例えば、「急いで走っていったけど、駅で電車に乗り遅れた」という嫌な夢を見たときに、そこで駅のホームで待っていたら近所のおじさんが「私の車に乗せていってあげるよ」と助けてくれたとか、あるいは臨時列車に乗れたとか、なんらかのプラスの結末を考える。
「イメージリハーサルセラピー」で重要なのは、嫌なところで終わらせないことです。というのも不安や、抑うつは、私たちの世界のとらえ方の認知の偏りによるところがとても大きいからです。悪夢も同様で、見た後に意識的にいいイメージや、望ましいプラスのイメージをつくりだすことによって、自分自身の心や考え方の偏りをより現実的な方向に修正するのです。これは認知療法、認知行動療法です。
もし悪夢を見るので通院したいと考える場合は、認知行動療法ができる臨床心理士がいるクリニックがいいのではないでしょうか。ただし、保険診療で受けられる心理療法として、うつ病、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、PTSDがありますが、悪夢は保険適用外となります。