働き盛りの年代が、もっとも悪夢を見る!
悪夢の原因として考えられる一番の要因は、ストレス。私が行った調査をもとに、年代別に悪夢を見る頻度の傾向を見てみると、勤労者では30~40代が突出しています(図参照)。仕事上の強いストレスに関する調査からも、30代が一番ストレスフルなこともわかっています。40代は抑うつ症状と不眠症状が多く、50代はその傾向が弱まりいい夢が増えて、60代以降になると、さらに楽しい夢が増える。
おそらく50代は30代、40代に比べて、会社での地位や生活への不安も減ってきますし、リタイア後の60代は仕事でのプレッシャーから解放されることが、悪夢が減っていく理由なのではないでしょうか。
普段の生活上のストレスが悪夢になることもありますが、ストレスの強度が高くなっていくと、トラウマの夢になることもあります。これはPTSDや精神障害の診断の症状の1つとなっています。生活上のストレスの夢とトラウマの夢が、どのように違うかというと、トラウマの夢は同じ内容の夢を繰り返し見て、同じところで飛び起きます。一晩に複数回見ることもあります。しかも夢の内容は、体験したトラウマの内容とそっくりそのままのシチュエーション。ここがストーリーに変化が見られる生活上のストレスによる夢との大きな違いです。
性格による違いもあります。大まかに言って、心配性、神経質、不安度の高い人はよく夢を覚えていて、現実生活を積極的に過ごす性格の人はあまり夢を覚えていないことのほうが多い。
その理由を探るために、夢をよく覚えている人を「高想起群」、夢をあまり覚えていない人を「低想起群」とグループ分けして睡眠実験を行ったことがあります。人は眠っている間にレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返しますが、ストーリー性のある夢を見るのはレム睡眠のとき。この実験では、脳波計と眼電図を使って睡眠の状態を観測し、レム睡眠が終了して2分以内に被験者を起こして、夢の内容を語ってもらいました。というのも、レム睡眠終了直後に起こすと、普段は夢を覚えていない人でも、ほとんどの人が夢を思い出しやすくなるのです。