問題なのは、親が認知症と診断されていた場合。認知症の親が車を運転したら事故を起こすかもしれない、と予想できたにもかかわらず、運転するのを黙認してしまった、あるいは自分の車を貸してしまったということになると、それが過失責任とみなされ、家族に賠償責任が生じる可能性がある。
認知症を患っていたとしても賠償額は低くならない。損害賠償額は、ケガをした人、亡くなった人の逸失利益がいくらになるかで決まる。
被害者への損害賠償額がいちばん高くなるのが、働き盛りで年収が高い人が寝たきりになってしまうケースだ。亡くなった場合には、将来稼げたはずのお金から生活で使ったであろうお金を差し引いて算出するから結構金額は減る。ところが寝たきりになると、将来稼げたお金プラス介護費用が必要になるから、賠償額が高くなるのだ。
子供が亡くなった場合はどうか。親の悲しみが深いので賠償額も膨らみそうに思えるが、実際はさほど大きな額にはならない。子供がまだ小さいと将来いくら稼ぐのかわからないから、平均的な年収を基に計算するしかないからだ。また、実際に働きはじめるのは10年先、20年先なので、その分の金利を割り引くことになり金額はさらに低くなる。すでに退職している高齢者は、将来稼げるお金が年金程度。それから生活費で使う分を差し引くと賠償額は低めになる。