また、ルールが守られないことによる就活の早期化・長期化も懸念されているが、その可能性は低いと私は見ている。なぜなら、あまりに早く内定を出したとしても、学生の入社意志を長期にわたってつなぎ止めるのは難しいからだ。1年生の段階で内定をもらった学生が、もし本命企業の選考が4年生時にあれば必ず受けるし、採用された暁には内定を辞退するだろう。その間、学生の教育に力を入れていれば、その労力も水泡に帰す。早く動きすぎるのも、コストがかかり、リスクを伴うのである。

これらの要素を考えると、大企業は優秀な学生を確保するため、通年採用という窓口を限定的に設け、今は経団連非加盟企業などが中心に動いている12月から翌年の2月あたりにかけて採用。そして一般的な学生を採用・育成する一括採用も残し、4月前後で選考活動を実施するのではないだろうか。

そして経団連がルールの廃止を決め、その代わりに、学生が困らないよう政府と大学がルールを決めることになった。ある一定の枠組みはつくられそうなので、採用スケジュールが企業によってまちまちになり、超長期化するような混乱は起きないものと思われる。

学生の人気企業も二極化していく

このように選考活動が早期化するのは考えにくいが、企業の広報活動は大学1年生や2年生を対象に、超早期化するはずだ。企業が優秀な学生を獲得するための第一歩は、自社を学生に認知してもらうことだからである。

最近では、採用過程の透明性をアピールする企業もある。グーグルは18年、「グーグル・リワーク」というサイトを立ち上げ、そこに自社の採用方針や基準を掲載した。不透明で、本音と建前のある選考過程に不満を抱いている学生は多く、このようなオープンさは誠実な印象を与え、企業のプラスイメージにつながる。

採用活動における広報、魅力付け、差別化ができる企業に学生はどんどん惹かれていき、それができない企業はそっぽを向かれる。前述したように、ルールが守られない自由化した環境では、学生が二極化していくだろう。そして同様に企業もふるいにかけられ、二極化するのではないだろうか。

谷出正直(たにで・まさなお)
採用アナリスト
1979年、奈良県生まれ。エン・ジャパンで、新卒採用支援事業に約11年間携わる。2016年に独立し、新卒採用のコンサルティング、アナリストとして活動。大学や学生向けのセミナーも行う。
(構成=山田由佳 写真=iStock.com)
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