「プロ経営者」はビジネスを広げるからこそ高額報酬

ゴーン氏を含む経営者の高額報酬に戻りましょう。

調査によってバラツキはありますが、日本の大企業の社長の報酬は平均5000~6000万円程度で、従業員の10倍から20倍といったところです。米国では経営者は数億円から数十億円、場合によってそれ以上の高給を取ります。従業員との格差は百倍とか数百倍といったレベルです。日米の差の一因は、日本ではいわゆる「サラリーマン社長」、社内昇格の延長でトップに就く人が多いことも影響しています。

国や企業によって事情が違うのは確かです。とはいえ、やはり米国の経営者の超高額報酬には首をかしげたくなります。日本と米国で、社長の力が生み出す付加価値にそれほどの差があるのでしょうか。

米国では業績が悪いとすぐに経営トップを外部からスカウトして入れ替えます。「プロ経営者」というと格好良いですが、逆に言えば「替え」がきく専門職でしかないともいえる。その「プロ」がビジネスを広げ、価値創造のすそ野を大きくするのなら、それは社会の中でも称賛され、高額報酬を受け取るに値するのだと思います。

しかし、コストカットや部門売却で数字を作って、浮いたキャッシュによる自社株買いで株価を上げてストックオプションで自分が潤うというよくある「再生」のパターンをたどるとなると、頭の中にクエスチョンマークが浮かんでしまう。無論、見込みのない事業を未練たらしく続けがちな日本の経営者よりはマシかもしれませんが……。

世界をよくする人は相応の報酬を得るべき

『おカネの教室』のなかで、講師のカイシュウさんは中学生2人に「世の中の役に立った人がちゃんと報われる」という仕組みが市場経済を根本で支える土台だ、と説きます。「かせぐ」に値する、つまり世界をより良き場所にする事業に貢献した人は、経営者に限らず、相応の報酬を得るべきです。そうやって「良き担い手」にお金が流れることで好循環を生むのが、「神の見えざる手」の役割です。

経営者の貢献が大きければ、その見返りが桁外れであろうが、問題はありません。文字通り世界を変えた経営者たち、たとえばアマゾンのジェフ・ベゾスや亡くなったアップルのスティーブ・ジョブズが巨万の富を得ることに異を唱える人は少ないでしょう。節税術で悪名高い法人としてのアマゾンやアップルが、相応の税金を納めているのかという別の問題は残りますが。