結果を求めないほうが、結果は出やすくなる

リーダーに求められることは、相手の変化を促し、幸せな人生を送ってもらうことです。結果的に成果や結果が出たとしても、それは最終的な目的ではありません。ただし、会社で働いているかぎり、しかもリーダーである以上、結果や評価にまったく無頓着というのはあまり現実的でないでしょう。「相手の幸せのためにコーチングや指導をするなんて荷が重い」と思う人もいるはずです。

そこで、「幸せ」に関するハーバード大学の研究を紹介します。ハーバード大学が1万2000人以上を対象に、30年以上にわたって追跡した「幸福」に関する研究によると、「日々接している周囲の人間が幸せを感じると、本人も幸せを感じる確率が15%高まる」ということです。さらに、「人の幸福度は本人から数えて3人目まで影響する。幸せだと感じている人の配偶者や同僚を通じて、さらにその人の友達や配偶者や同僚も幸せを感じる確率は6%高まる」とされています。

結果を引き出せるのは「与えること」に注力する人

つまり、メンバーが幸福であれば、リーダーが幸福を感じられる確率は15%アップするということ。さらにリーダー自身の家族や友人にまでその影響が及ぶということです。コーチングを通じてメンバーを幸せにすることに集中すれば、めぐりめぐってリーダーの幸せにもつながるのです。裏返せば、結果や評価に執着しないほうが、リーダーにとって好ましい結果をもたらす可能性が高くなる、というわけです。

では、結果を求めずして結果を引き出せる上司とは、どのような人でしょうか?

一つ言えるのは、「与えること」に注力する人ということです。といっても、モノを与えるわけではありません。シンプルに、相手の喜ぶことをしているのです。私自身も、うまくいかないことやつらいことがあったときは、積極的に他人の幸せにつながる行動を意識しています。

奥さんが喜ぶことをしたり、職場のメンバーの力になるようなことをしたり、結婚した友人に、同級生からメッセージを集めて送ったり、といった“ちょっとしたこと”でいいのです。意識して行動しているうちに、いつの間にか、自分も幸せを感じられるようになるはずです。