医療費の備えとして、真っ先に思い浮かぶのが民間保険会社の医療保険だが、高齢期になると民間保険への加入は難しくなる。民間保険は事前に健康状態を告知することが義務づけられており、病歴や持病によっては加入を断られることもある。持病があっても加入できるタイプもあるが、保険料は割高だ。たとえば、A社の引き受け基準緩和型の医療保険(入院日額1万円)に70歳の男性が加入した場合、月払保険料は約1万6000円。1年間では約19万円にも及ぶ。
高齢者の高額療養費が見直されたのは事実だが、いきなり負担が青天井で増えたわけではない。引き上げ対象となったのは高所得層なので、ある程度の貯蓄があれば賄えない金額ではないだろう。
そこで、お勧めしたいのが医療費貯蓄だ。医療費専用の銀行口座をつくって貯蓄しておき、まとまった医療費が必要になったら引き出して使う。高齢になると数十年前に加入した養老保険などの満期金が入ることもあるが、それらをそっくり貯蓄しておけば、新たな保険に入らなくても十分に医療費を賄うことはできる。高齢期の医療費の備えは貯蓄を中心に考えよう。
たった「70円」で親の健康を守る方法
高齢になると複数の医療機関を受診している人も多い。それぞれの医療機関で処方された薬をまとめてみたら、飲み合わせがよくなかったり、効果の同じ薬が重なっていたりして、精神不安や認知機能の低下などを引き起こす例が報告されている。
こうした健康被害を防ぐうえで頼りになるのが、「かかりつけ薬剤師」による服薬支援だ。患者が指名した薬剤師が通常の服薬指導(残薬のチェック、後発医薬品の情報提供、薬歴の管理など)に加えて、服薬状況を継続的に把握し、24時間いつでも相談に応じてくれる。医師に対して処方内容の確認・提案も行う役割も担っているので、問題のある多剤投与を減らせる可能性もある。
服薬指導の料金は調剤報酬における「かかりつけ薬剤師指導料」が算定され、自己負担額は約70円(75歳以上で1割負担の人の場合)。通常は「薬剤服用歴管理指導料」が算定され、自己負担額約40円(調剤基本料1、または4の薬局にお薬手帳持参の場合)なので、1回あたり約30円高くなる。それでも高齢の親の薬の多剤投与に悩んでいる人にとっては、何でも相談できるのでコストパフォーマンスは悪くないだろう。