私は決して多読ではないのですが、本を読むことの重要性は十分に理解しているつもりです。人間誰しも身体は1つしかなく、いま現在しか生きられない。しかし、本を読むことで自分の知らない時代や場所に誘ってくれます。そして、どんな人が、いかなる考えで行動したのかを教えてくれます。

翻ってみると、コンビニ業界は大きな変革期に入っています。ファミリーマートがユニーと経営統合し、サークルKサンクスが吸収されました。当社もスリーエフやセーブオンにローソングループの仲間になってもらいました。業界地図は大きく変わりつつあります。

その一方で、日本国内の人口は減少に転じ、手を拱(こまね)いていると市場は縮小を余儀なくされます。およそ半世紀にわたってコンビニ業界は、新規出店をすれば売り上げがアップするという右肩上がりの時代を謳歌してきました。しかし、もはやそうした甘い時代ではなくなっているわけです。

そう考えていくと『坂の上の雲』で描かれた時代とオーバーラップしていることがわかります。だからこそ、一人ひとりが当事者意識を持って「全員経営」で臨むことの重要性を改めて痛感するとともに、明治期の殖産興業と同じように「eコマース」や「AI(人工知能)」といった新しい技術の導入も積極的に行い、新境地を切り拓いていかねばと考えています。

調査概要●2009年から2018年までのプレジデント誌で実施した読者調査(計5000人)に、今回新たに弊誌定期購読者、「プレジデントオンライン」メルマガ会員を対象にした調査(計5000人)を合算し、「読者1万人調査」とした。ランキングのポイント加算にあたっては、読者の1票を1ポイント、経営者・識者の1票は30ポイントとした。経営者・識者ポイントは、弊誌で過去に取材した経営者、識者の「座右の書・おすすめ本」と、今回取材先に実施したアンケートによるもの。続編やシリーズに分散した票は合算(例えば、『ビジョナリー カンパニー』に10票、『ビジョナリー カンパニー2』に20票入った場合は、『ビジョナリー カンパニー』に30票とした)。また、同一著者(例えば、稲盛和夫氏、司馬遼太郎氏、百田尚樹氏)による本は票数の多い書籍を「ランキング入り」としている。結果として、時代の流行などに左右されない良書が多数ランクインできたもようだ。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)
ローソン代表取締役社長
1969年大阪府生まれ。93年大阪大学経済学部卒業後、三菱商事入社。畜産部に配属。その後グループ企業の米国豚肉処理・加工製造会社勤務、三菱商事社長業務秘書などを経て、2014年ローソン副社長に。16年6月から現職。
(構成=岡村繁雄 撮影=渡邉茂樹、市来朋久)
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