主婦は転落の危険と隣り合わせ

橋本健二『アンダークラス』(ちくま新書)

アンダークラス女性には、比較的恵まれた家庭に育った人が多い。しかし学校で成績が振るわなかったり、いじめにあったり登校拒否に陥ったりし、場合によっては学校を中退する。就職に失敗した人も多い。しかし、それだけではない。普通の家庭に育ち、普通に就職して、普通に結婚したものの、何かの事情で離婚したり、あるいは不運にも死別したりして、アンダークラスに流入する。男性の場合は、下層から下層へという「貧困連鎖」のメカニズムがかなりの程度に働いているが、女性は必ずしもそうではない。というのも、女性には男性とは異なり、いったん専業主婦やパート主婦を経験したあとで、離死別を経てアンダークラスに流入するというルートがあるからである。結婚して主婦となり、何不足なく順調に女の人生を歩んでいると思われた女性が、アンダークラスに転落する。主婦という地位は、常にそんな危険と隣り合わせなのである。

橋本健二(はしもと・けんじ)
早稲田大学 人間科学学術院 教授
1959年生まれ。東京大学教育学部卒。東京大学大学院博士課程修了。静岡大学教員などを経て、現在に至る。専門は社会学。著書に『階級都市』(ちくま新書)、『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)、『「格差」の戦後史』『はじまりの戦後日本』(河出ブックス)、『階級社会』(講談社選書メチエ)などがある。