「家庭の理由」で最初の仕事を辞める
離死別者は、まったくようすが違う。最初に就いた職業は正規労働者が多く、離別者71.7%、死別者で86.2%である。死別者の方が多いのは、離別者より年齢層が高く、最初の職は正規雇用が当たり前という時代に就職したからだろう。離職経験のない人は、調査対象者には一人もいなかった。そして最初の仕事を辞めた理由をみると、「家庭の理由(結婚、育児など)」が約6割(離別者58.1%、死別者62.1%)に上っている。そして離職後は、離別者で48.8%、死別者で61.7%が無職となっている。アンダークラス女性には、結婚を機に無職となった経験をもつ人が多いということがわかる。
離死別者の職業経歴を、もう少し詳しくみてみよう。図表2は職歴データを用いて、結婚前後と離死別前後のようすをみたものである。
離別者・死別者とも、結婚直前には半分以上の人が正規労働者だった。非正規労働者が離別者(26.4%)で多く、死別者(8.6%)で少ないのは、やはり年齢層の違いによるものだろう。しかし結婚後は、正規労働者が大幅に減る。離別者ではわずか7.8%、死別者でも17.2%である。離別者ではその分だけ無職が増えているが、死別者では非正規労働者も同時に増えている。結婚を機に、正規労働者からパート主婦に、または専業主婦に転身したようすが、くっきりとみてとれる。
離婚と死別で非正規労働に
離死別1年前をみると、離別者・死別者とも、結婚直後より非正規労働者が増え、その分だけ無職が減っている。離死別までの間に、専業主婦からパート主婦になったのである。とくに死別者では増え方が大きいのは、夫が病気などですでに収入を得ることができなくなっていたケースがあるからだろう。そして離死別後には、大きな転機が訪れる。無職は大幅に減って1割強程度となり、大部分の女性たちが生計を立てるため仕事に就いたことがわかる。離別者では正規労働者も数パーセントほど増えているが、大半は非正規労働者である。死別者には高齢者が多いためか、その後無職の比率は変化しないが、離別者では無職が減り続け、3年後にはわずか4.9%となる。多くの専業主婦が、離死別を機に非正規の仕事についてアンダークラスへと流入したこと、また多くのパート主婦が、離死別によってアンダークラスへと移行したことがよくわかる。
学校を卒業して社会に出た段階では、多くの女性たちが正規雇用の職をもっていた。ところが結婚すれば家に入るのが当然という通念に従って退職したことから、彼女たちは経済的自立の基盤を失った。もはや取り返しがつかないことだが、これが現在の彼女たちの窮状の、そもそもの背景なのである。