全人類の95%が先延ばしグセをもっているワケ
もちろん、皆さんも「先延ばしグセはマズいから治さなきゃ」と一度は思ったことがあるでしょう。ところが、なかなか克服できないことが多いはず。それには理由があります。
そもそも人間の脳は基本的に怠けものにできています。脳にとって、もっとも大切なのは「生命の維持、生存をすること」。そのために「危険」「不安」「変化」を嫌い、「安心」「安全」「安定」を第一に追及するからです。たとえ「今すぐ新しいことに手をつけなきゃ」と思っても、それが生存を脅かす可能性があると捉えて脳が不安になり、「やめとこうよ」と拒絶反応を起こしてしまうのです。
カナダ・カルガリー大学ビジネススクールのピアーズ・スティール教授が過去40年にわたって分析したところ、実に全人類の95%の人が「自分に甘く、仕事や作業で何らかの先延ばしをする」ことが明らかになりました。つまり、先延ばしグセは、年齢、性別に関係なく、人類共通の習慣病といえるのです。
脳の処理能力はコントロールすることができる
とはいえ、「じゃあ、先延ばしは仕方がないよね」とはいきません。
先延ばしの克服には、人間の脳の処理能力「マルチタスク」と「シングルタスク(モノタスク)」を把握することです。
マルチタスクとは「AとBの両方に同時に取り組む」、つまり複数の作業を同時進行で処理していくことです。一方、シングルタスクは単純作業で処理すること。
人間の脳は優秀ですが、実はタスク処理に関してはマルチタスクが非常に苦手です。例えば、目の前に締め切りが近いやりかけの仕事があっても、つい、今夜はパーッと飲みに行っちゃおう――、ということはありますよね。しかし、いざ飲みに行くとイマイチ盛り上がれない。
これは人がやり遂げたタスクよりも、未完のタスクのほうをより強く覚えているからです。これを「ツァイガルニク効果」と呼びます。成功した体験より失敗したときのこと――、例えば、両思いでつき合った恋よりも成就しなかった恋のほうが鮮明な記憶なのと同じです。
未完のAを先延ばしにしてBをやるとき、未完のAが「気がかり」になって脳の片隅に残る。すると、自分ではBだけに集中しているシングルタスクだと思っていても、脳は無意識のうちにAとBの両方に同時に向き合うことになり、脳に大きな負荷がかかってしまいます。この脳への負荷が「先延ばしのリスク」につながるのです。
逆にいえば、脳に負荷をかけないコツさえわかれば先延ばしグセをなくすことができます。