「コスメが好き」だけで人と出会える

コスメ垢を通じて、フォロワーとコスメ好き同士でコミュニケーションが取れることも楽しい。私はこれまで3回ほど、コスメ垢を運用するフォロワーとオフ会をしたことがある。普段暮らしているだけでは出会わない、職種も年齢も違う女性と、「コスメが好き」という共通点だけで繋がれるのはとても幸せなことだ。

オフ会の内容は、GINZA SIXと銀座三越のコスメカウンターをぶらぶら見て回り、新作について各々の見解を述べ、とらや銀座店でかき氷を食べながら、美容雑誌を読みつつコスメ・美容の情報交換をするというシンプルなものであった。

「CHICCAの夏コレ、めっちゃ可愛い!」
「ルブタンのリップかっこいい!」
「資生堂の接客は最高……」

友達とコスメを見て回るときは、思いの丈を100%出して話してしまうと引かれかねないため、興奮を抑えて常識的な範囲で盛り上がることが多い。しかしそれが、同じくらいコスメへの熱量があるフォロワーとであれば別である。カウンターを友人といる時の3倍くらいの時間をかけて見て回り、お互いの推しブランドの前では立ち止まり、いかにそのブランドが良いかを語り合う。Twitterで日々している会話をそのまま現実でやっているだけなのだが、目の前にコスメがあると楽しさが断然グレードアップする。

CHICCA推しの方に、「CHICCAのイメージは透明感のある儚い女の子で、たとえばアイドルマスターの萩原雪歩みたいな感じ」と言われたときは、コスメを擬人化するという発想に、はっとさせられた。他にも、パーソナルカラーによって好きなブランドが違うとか、オフ会をして実際に会って話すと毎回発見がある(オフ会調べでは、内資のブランド=イエローベース向き、外資のブランド=ブルーベース向きの色のアイテムが多い印象がある)。

単調な日々が充実するようになった

劇団雌猫『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』(柏書房)

コスメ垢を始めてから、単調な日々が充実するようになった。予定がない平日の仕事終わりはフォロワーとコスメ談議に興じることができるし、会社に行きたくない月曜の朝も、土日に買ったコスメを使おうと思うと、出社する気になった。

私にとってコスメは、コミュニケーションのツールだ。冒頭から書いてきたとおり根っからのオタクでプレゼン好きのため、好きで買っていたコスメも次第にプレゼンの道具になっていった。常に新しいコスメの情報が入ってくるので、情報を追っていると否応無しに毎月のコスメ係数が跳ね上がるのが悩みといえば悩みだ。年齢的にもそろそろ将来に向けて出費を控えたいところだが、コスメ垢の運用は当面やめられそうにない。

コスメが少しでも好きな方、ぜひご自分の好きなSNSでコスメアカウントを始めてみてください。楽しいよ! そして、オフ会は本当に盛り上がります。この文章を読んで、私が誰かピンと来る方もいるのでしょうか? いつかインターネットでおしゃべりできますように!

劇団雌猫(げきだんめすねこ)
平成元年生まれのオタク女4人組(もぐもぐ、ひらりさ、かん、ユッケ)。2016年12月にさまざまなジャンルのオタクがお財布事情を告白する同人誌『悪友vol.1 浪費』を刊行し、ネットを中心に話題となった。2017年12月には『浪費図鑑』(小学館)として書籍化。現在は引き続き〈悪友〉シリーズを編集するかたわら、主催イベントや連載など活動を広げ、それぞれの趣味に熱く浪費している。
(写真=iStock.com)
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