よそおうことは「生き方の表明」

しかし、インターネットで知り合った友達が増えるにつれ、まるでアイドルやアニメキャラクターを応援するかのように、特定のコスメブランドにハマったり、推している作品を考察するくらいの熱心さで、自分の顔にあったメイク術を編み出したりしている人がいるのに気づきました。それからは、愛をそそげる趣味のひとつとして、「よそおう」という行為を見られるようになったのです。

「メイクって、自分のためにやっていいんだ?」
「おしゃれって、すごく自由なことなのでは?」

まるで「枷」のように感じていたコスメや洋服が、なりたい自分への扉をひらく「鍵」だと知れてから、日々自分をよそおう時間が、ほんとうに楽しいひとときになりました。そして、周囲にいるあの人、この人……いろんな人のよそおいの裏にある美学を知りたいと感じ始めたのです。そうした思いから生まれたのが、『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』です。

待っているのは全員、実在の女たち。コスメオタク、アイドルオタク、バリキャリOL、ロリータ、元アイドル、ドバイのネイリスト……などなど。総勢15人の女たちが、普段は明かしていない自分の「美意識」についてつづっています。

自分のためにするおしゃれも、他人のためにするおしゃれも、まだスタンスが定まらずに模索するおしゃれも、すべてはその人が「どうありたいか」と結びついた、その人ひとりだけのものに他なりません。そして、誰かがおしゃれをしたい理由、したくない理由を掘り下げることは、その誰かが「どうありたいか」を知っていく過程でもあると思います。自分の「好き」をつらぬいた格好も、世間の「ウケ」を狙った格好も、その人の生き方の表明である限り、ひとしく美しく、そしてめちゃくちゃかっこいいものなのです。

自分自身の美意識を探りたい人も、そして女性たちの「美」の実情を知りたい人も、ぜひ彼女たちのよそおいの裏側を、のぞいてみませんか?

「コスメアカウントを運営する女」の素顔

▼Twitterでコスメアカウントを運営する、24歳女性のエピソードを紹介します。
コスメアカウントを運営する女(画像=『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』より)

中学、高校と、おしゃれには無頓着に暮らしてきた。しかし20代になってからの5年間を振り返ると、コスメに概算50万円近くを費やしている。一番好きなコスメブランド・NARSのポイントカードには、1年で10万円以上購入した履歴が残っている。

コスメに興味を持ったのは、大学3年の時。就活のストレスをコスメの浪費で発散していた部分もあったかもしれない。Twitterで、コスメの購入報告や新商品の情報などを発信しているコスメアカウント――通称「コスメ垢」を見るようになった私は、都会的できれいなお姉さんたちの見よう見真似で、これまででは到底考えられない、1万円近くする粉(トムフォードのアイシャドウ)や、1万円を超える液体(資生堂の美容液・アルティミューン)を購入するようになった。

当初自分のアカウントは、大学のサークル(オタクばかり)でのコミュニケーション目的でやっていたのだが、卒業して社会人となってからは、自分でもコスメ関連のツイートをするようになり、気付けば遠目で見て憧れていたコスメ垢に近いものと化していた。フォロワーは5000人以上、1万人未満。最初はフォロワー3桁台の無名アカウントだったのに、パーソナルカラー診断に行ったツイートをしたところリツイート数が1万を超え、徐々にフォロワーも増えていった。

さて、コスメ垢の本分は「プレゼン」だ。いかにして、私はコスメ垢になったのか。しばしお付き合いいただきたい。