「女性がメイクをするのは男ウケのため」と考えるのは大間違いだ。女性は社会に出ると「マナー」として化粧を求められる。女性に生まれたがゆえに、社会が求める装いをしなければならないのは理不尽とも言える。だがその理不尽を逆手に取り、「なりたい自分への扉」としておしゃれやメイクを追求する女性たちがいる。彼女たちの本音とは――。

※本稿は、劇団雌猫『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』(柏書房)の「はじめに」と第1章の一部を再編集したものです。

「すっぴんで外に出ていいのは高校生まで」

朝起きて、歯を磨いて、顔を洗う。

老若男女誰もが行っている、毎日のルーティンです。

しかし女性には、さらにやらないといけないことがあります。

それが、「化粧」。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Coral222)

すっぴんで外に出ていいのは、せいぜい高校生まで。あの頃は「髪を染めるな」「化粧をして学校に来るな」と言われていたくらいなのに、大学や会社に入ったとたん、「女ならメイクをしてくるのが当たり前」「眉毛とファンデは最低限のマナー」と言われて、理不尽に感じながらも仕方なくメイクをしている女性も、多いのではないでしょうか。

また、日々「キラキラOLになりたいならこう」「今年のトレンドに乗り遅れないで!」などと語りかけ、女の格好はかくあるべし、モテたいなら美しくなれという規範を押し売ってくる雑誌や広告を目にし続けて、よそおうことそのものへの苦手意識が根付いてしまった人もいるでしょう。女性だからといって必ずしも、好きでおしゃれをしているわけではないのです。

「身だしなみのマナー」がおしゃれを遠ざける

あるいは、ほんとうは確固たる自分のスタイルを持っているのに、それを自由に出せず息苦しさを覚えている人もいます。

「就活するなら髪の黒染めはマスト」
「接客業だからネイルはNG」
「オフィスではスカートは膝丈までが原則」
「夏場でもストッキングは必ず着用」

世間でなんとなく作り上げられてきた「身だしなみのマナー」に反しないように自分のおしゃれを矯正していくうちにいつのまにか、ほんとうに好きな自分の格好がわからなくなってしまうなんてことも、きっとあるだろうと感じています。

今、この文章を書いている私――劇団雌猫のひらりさもその一人。女子校育ちの根っからのオタク女子であるがゆえに、男子の目を気にして好かれそうな格好をすることも、ファッション誌を通じて世間一般のトレンドを学ぶこともなく、大人になりました。アニメやマンガの女の子たちがキラキラしたコスチュームに変身するのはうっとりと眺めていたのに、現実世界の自分がメイクやおしゃれをすることは、「他人の要求に適った自分になること」に思えて、どこか敬遠していたのです。