彼氏より上の成績をとってはいけない?

共学校の中では、女の子が無意識のうちに自分の能力を抑えてしまうことがあります。とくに好きな人ができると、相手のプライドを傷つけてしまうから、女の子はかわいく見られるために、彼氏より上の成績を取ってはいけないなどという意識が働くことがあるのです。

「父親は仕事、母親は家事」という役割分担の家庭で「女性は男性に尽くすものだ」という価値観の中で育った子は、とくにその傾向が強いでしょう。彼氏よりいい成績は取れない、兄よりいい学校には行けないと自分で枠を決めてしまい、自己肯定感を低くしている女の子は意外に多いのです。

自分の意見を持ち、それをはっきり言えるようにならなければ、なかなか自分でつくった小さな枠から抜けることはできません。鴎友では中学1~2年生に「アサーショントレーニング」というものを導入しています。

Assertion(アサーション)は「主張」という意味の英単語ですが、このプログラムでは相手の立場を尊重しながら、自分の意見を主張するということを実践的に学びます。もともとは自己主張の強いアメリカで、引っ込み思案な人でもちゃんと自分の言いたいことを伝えられるようにするために始まったもので、日本には1980年代に入ってきました。

相手を推し量ったり、周りに合わせてばかりいないで、自分の言いたいこと、言わなくてはいけないことを相手の立場もわかった上でちゃんと伝えられるようにするためのトレーニングと言っていいでしょう。

ジャイアンに「本返して」という訓練

生徒たちが取り組む最初のプログラムの典型例は「本返してね」というものです。自分が本を貸した相手が、「ドラえもんのしずかちゃんだったら何て言う?」「のび太くんだったら?」「ジャイアンだったら……?」ということを話し合います。本を返してほしいのだけれど、「本返して」と言っても返してもらえないことがある。

相手が違ったら言い方を変えたほうがいい。どのように言えばジャイアンに伝わるだろう? なぐられずにちゃんと本を返してもらう方法は? このような答えのない問いを、皆で話し合いながら考えていきます。