その中で、言葉によるメッセージというのは単に自分が思ったことを相手に投げかければいいのではなくて、そこには関係性があるということが見えてくるのです。そして、相手を尊重しながら自己主張するスキルを学んでいきます。

このようなトレーニングが、実際にどのような場面で生かされるのでしょうか。例えば、友人とディズニーランドに行くことになりました。友人の家の門限は8時。一方の自分は6時です。「門限が6時なんて言ったら、バカにされるんじゃないか……」と不安になるのではなく、友人に「うちの門限は6時なんだよね」と話ができるかどうか。

その上で、「じゃあ、どうしよう」と考える。親に「この日だけは8時にして」と話をするのか、友人に一緒に早く帰ってもらうように頼むのか。「6時の門限があるから、ディズニーランドには行けない」と最初から諦めるのではなく、自分の主張を通すために知恵を絞るのです。

価値観の異なる意見を尊重する

価値観の違う友人同士が一緒に遊びに行くという現実的な話から、お子さんが成長するに従って場面は広がっていきます。違う年代の人と働くにはどうしたらいいか。さらには文化、価値観も歴史観も違う隣国の人ともしっかり話し合い、明日の平和な世界を共に創っていくにはどうしたらいいか。そのような広い世界での活躍に向けた第1歩が、この「本返して」のトレーニングなのです。

吉野 明(著)『女の子の「自己肯定感」を高める育て方:思春期の接し方が子どもの人生を左右する!』(実務教育出版)

家でこの練習を行うには、例えば食事中がいいでしょう。「~に対して、どう思う?」と積極的に娘さんに問いかけ、意見を聞いてみてください。「お父さんはこう考えている」「お母さんはこう考えている」と、ご自身の意見を伝えてもいいでしょう。

その際は、できればご両親で意見が違うほうがいいですね。そして大切なのは、娘さんの意見であれ、パートナーの意見であれ、尊重することです。そうすることで、「自分の意見を言ってもいいんだ」「一つの意見が正解というわけではないんだ」ということを実践的に学ぶことができます。

鴎友では、中1の昼食の時間、最初のうちは「サイコロトーク」(編集部注:サイコロを振り、出た目が指示するテーマについて話し合うこと)を行って、意見を言い合うことが日常となる工夫をしています。