※本稿は、「プレジデント」(2018年10月1日号)の特集「高校・大学 実力激変マップ」の掲載記事を再編集したものです。
大学の立地が与える影響
イノベーションを生み出し、日本経済を飛躍させるカギを握るベンチャー企業。リスクをとって会社を立ち上げるチャレンジングな起業家たちは、どの大学から誕生し、成功を収めているのか。今回は起業のひとつの目標である東証マザーズ上場企業の経営者をランキングにまとめた。
社長の出身大学1位は慶應義塾大学、続いて2位が早稲田大学と、私学2校が上位に並んだ。ただし人数を見ると、慶應は19人、早稲田は11人と開きがある。慶應は1990年代にSFC(総合政策学部、環境情報学部)を設立し、当時はまだ珍しかった文理融合とIT教育を推進して、クックパッド創業者の佐野陽光氏やSansanの寺田親弘氏など、有名ベンチャー起業家を多数輩出してきた実績がある。常に比較される2校だが、起業家を生み出す環境としては、今のところ慶應に軍配が上がるようだ。
3位には一橋大学、関西学院大学、東京理科大学が入った。7位には青山学院大学や日本大学、明治大学が入るなど、大企業社長編の上位ランキングには姿を見せなかった大学名が目立つ結果となった。
起業家を多く送り出している大学には、どんな共通点があるのか。学生を対象に就職支援サービスを提供するワンキャリアの執行役員・北野唯我氏は、「学生のうちに起業家と交流できる環境や機会がどれだけあるかが重要なファクターになる」と話す。
「ランキングを見ても、上位に入っているのは関東、特に東京にある大学が圧倒的に多い。これは学生たちが起業家やベンチャーで働く人と触れ合う場がたくさんあるからです。もともとベンチャー企業は東京に集中していて、最近はインターンの受け入れを拡大しているので、学生が働く機会はいくらでもある。起業家と交流できるイベントやセミナーも多いので、起業家志向の学生が育ちやすい環境が揃っています。青山学院大学が比較的上位に入っているのも、渋谷という新しいものが日々生まれる刺激的な場所にキャンパスを置いているという理由が大きい」
北野氏によれば、「学生と就職希望の面談をしても、関東は新卒の時点で起業かベンチャーへの就職を志望する人が珍しくないのに対し、関西は本当に少ない。エリアによる意識の差は歴然です」とのこと。環境が与える影響は、かなり大きいと考えてよいだろう。