脱北の動機は「韓流アイドルに憧れていたから」

基本的に強気で、配信中に「アカ野郎」「スパイ」などと罵られることもあるが、そのたびに2~3倍に「口撃」し返す姿は奇しくも北朝鮮的だ。挑発的なコメントをした視聴者を18分間罵倒し続けたことも。

同じ分類にアンニュイな語り口のイ・ピョンや、回虫が口から飛び出てきたエピソードなどを笑顔で語るイ・ソユルらがいる。いずれも韓流スター顔負けのルックスで、タレント的な人気も獲得している。ネックは、彼らが幼少期に脱北しているため基礎知識に乏しく、エピソードが古いという点だ。

対して、カジュアル越境型は脱北時期が比較的新しく「ちょっと関西行ってくる」というようなノリで脱北してくる人々だ。以前から若い世代に時折見られたが、数年前に脱北した、20代のハン・ソンイ(13年脱北)もこれにあたる。現在は韓国男性と北朝鮮出身女性が共同生活をするリアリティ番組「うまくやっていきましょう」(※筆者意訳)にも出演している。

脱北の動機は「韓流アイドルに憧れていたから」。北朝鮮式発音とノリが抜け切らない絶妙なダサさを残す彼女の配信のウリは「北の住民と通話して得たリアルな情報」。中国製の携帯電話に細工することで直通電話が可能なようで、家族とも頻繁に連絡を取り合っているという。韓国の国家保安法に抵触しないのか、北に残した家族は無事でいられるのかなど根本的な謎は残るが、脱北者事情が様変わりしてきたことを窺わせる。

以前、とある場所で偶然出会った脱北者が「韓国は外国ではなく、地続きの『豊かな地域』という感覚」と筆者に語ったことがあるが、これは他国の人にはわかりづらい感覚かもしれない。