ビンラディンに何度も話を聞いたジャーナリスト

言論・報道の自由を擁護することを目的としたジャーナリストによる非政府組織「国境なき記者団」のウェブサイトに、今年に入って62人のジャーナリストが殺されたと書いてある。

10月2日、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館に、離婚証明を手に入れるために訪れたサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏(59)も、その1人である。

「ニューズウイーク日本版」(11/6号)によれば、カショギ氏の「異変」に最初に気が付いたのは、その建物の近くで待っていたトルコ人の婚約者だった。彼のアップルウオッチと同期していたiPhoneに、カショギ氏が拷問を受けていた様子が録音されていたというのだ。だがこれは、何らかの手段で音声情報を入手したトルコ当局が、それを知られないために、そうリークしたといわれているそうである。

カショギ氏は9・11を主導したウサマ・ビンラディンへの数度にわたるインタビューで名前を知られた。サウジアラビア支配層に食い込みながらも、その保守性を容赦なく批判するようになり、17年にアメリカに亡命。ワシントン・ポストでコラムニストとして、現ムハンマド皇太子の体制を痛烈に批判してきた。

安全地帯でぬくぬくとする大手メディアの記者たち

だがカショギ氏はニューズウイークに対して生前、「政権打倒を叫ばない。あまりに危険だから」と語っていたという。それだけ身の危険を熟知していたカショギ氏が、なぜ、トルコとはいえサウジ領事館へ単身で入っていったのか疑問だが、このように、権力の実態を暴こうとするジャーナリストに、危険はつきものである。

日本のように、平和ボケした国民と、安全地帯でぬくぬくと惰眠を貪っている大手メディアの記者たちは、こうした危険を他所事だと思っているのだろう。だから安田氏のようなケースが起きると、ヒステリックに自己責任などとバカなことを叫ぶ輩に対して、たしなめることもできず、自分たちの恥を覆い隠そうと悪乗りするメディアまで出て来る始末だ。

この国にはハロウィーンでバカ騒ぎする自由はあるが、真の言論の自由度はすこぶる低い。それは、大手メディアに所属している多くの人間たちが、権力チェックよりも権力にすり寄ることを仕事だと勘違いしているからだ。

ここで週刊誌の論調も見てみよう。