面接では、志望動機ではなく、実績を聞け

中小企業の採用では、最終的に社長面接をするのが一般的だろう。このときには事前になにを質問するかを統一しておかなければならない。採用基準がないような面接では、単に社長とのおしゃべりが上手な人ばかりが採用されてしまうことになる。

企業の採用力は、面接における質問レベルを見ればある程度わかる。ありがちなのは「将来の展望は」「この会社を選んだ理由は」といった意見を求める質問だ。意見を聞くのは耳に心地よいし、前向きな話になりがちだが、意見は意見でしかない。語るだけであれば誰にでもできるし、予想される質問であれば模範解答を事前に暗記している。

社長にとって面接で聞くべき情報は、その人がこれまでなにをしてきたのかという実績だ。100の意見よりも1の実績こそ選択の役に立つ。実績とは、華やかなものである必要などなく、むしろ地味なものこそ、人となりが出るものだ。前職のことでもいいし、学生時代のことでもいい。実際に達成したことを尋ねるべきだ。

実績を聞く場合は、結果ではなく、過程を聞け

ここで注意しなければならないのは、実績といえどもすべて自己申告でしかないということだ。いくら立派な結果を導いたと説明があっても、真実がいかなるものであったかなど面接時に確認することはできない。だから質問するべきなのは、達成した結果ではなく、その過程についてだ。このとき参考になるのが、「失敗からいかに回復したか」ということだ。

人によってこれまで経験したことはまったく違う。それでも「失敗」というのは、すべての人に共通する経験だ。人は挑戦をするから失敗をし、失敗を乗り越えていくから学ぶことができる。失敗からいかに回復したかというプロセスを知ることは、その人が失敗からいかに学んでいるかを知るヒントになる。

誰しも面接時に失敗について質問されるとは想定していない。だからこそ、その人の本質が見えてくる。

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島田直行(しまだ・なおゆき)
島田法律事務所代表弁護士
山口県下関市生まれ、京都大学法学部卒。山口県弁護士会所属。「中小企業の社長を360度サポートする」をテーマに、社長にフォーカスした“社長法務”を提唱する異色の弁護士。特に労働問題は、法律論をかかげるだけではなく、相手の心情にも配慮した解決策を提示することで、数々の難局を打破してきた。これまで経営者側として対応してきた労働事件は、残業代請求から団体交渉まで、200件を超える。
(写真=iStock.com)
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