ポジティブな意見が出やすくなる最初の一言

会議自体をネガティブな意見を言いにくい雰囲気にしてしまうという手もあります。僕は毎回、会議の冒頭で、「僕はこの大会(組織)をこういうふうにしたい」「こういうビジョンがあるから、この会議はこういうふうに進めていきたい」という話をしています。あらかじめポジティブな目標が設定されていれば、ポジティブな意見が出やすくなるので、それを意識しているのです。

たとえば、大会終了後の反省会では、「自分はほとんど3日間寝ずに働いた」「雨の中ずっと外に立たされて大変だった」などとストレスの発散合戦になりがちです。そこで、「ネガティブな意見も次に生かすための貴重な意見なので、誰かを否定するとかではなく、客観的にみなさんが感じたことを言ってください」と最初に断っておく。

すると、「同じ人に負担が偏りすぎないように、来年からはどうしたらいい?」というように、次につなげることができます。1回限りのイベントだと、反省を次に生かすことはできませんが、UTMFは毎年開催する前提なので、否定的な意見も次に生かして昇華することができるのです。

そうやって、ポジティブな意見が大勢を占めてくると、ネガティブ思考の人はだんだん居づらくなってきて、自分から自然と遠ざかっていきます。この人はみんなの足を引っ張っているなと思っていると、本人から「来年はちょっと勘弁させてください」と言ってきたりするので、きっとお互いに感じるものがあるのではないかと思います。

鏑木 毅(かぶらき・つよし)
プロトレイルランナー
1968年、群馬県生まれ。群馬県庁で働きながら、アマチュア選手として数々の大会で優勝。40歳でプロ選手となる異色の経歴を持つ。2009年、世界最高峰のウルトラトレイルレース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(通称UTMB、3カ国周回、走距離166km)」にて世界3位。現在も世界レベルのレースで常に上位入賞を果たしており、50歳でのUTMB再挑戦を表明。主な著書に『極限のトレイルラン』(新潮社)などがある。
(写真提供=トレイルランニングワールド)
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