野党予備選で、候補者一本化のプロセスを「見える化」せよ

先月9月に、僕は『政権奪取論―強い野党の作り方』(朝日新書)を出版した。自称インテリたちは強い野党が必要だと、皆口にする。しかし、じゃあその強い野党をどう作るかについては誰も具体的に提案しない。重要なことはアイデアを口で言うだけではなく、それを実行するプロセスを考えることだ。

まあ実際の政治をやったことがない自称インテリたちに、具体策を求めることは無理な話かもしれない。問題なのは、野党自身にも具体策がなさそうなことだ。

ゆえに僕は、強い野党を作るプロセスにこだわって『政権奪取論』を上梓したつもりだ。本の中身の詳細については、そちらを読んでもらうことにして、今回、僕が特に強調したいことは、『政権奪取論』でも提案した野党予備選に向けて、野党は即座に動くべきだ、ということ。

強い野党になるためには、議席数を増やさなければならない。しかし、現在複数乱立している野党のうち、ある野党の一つがいきなり議席を大幅に増やすことには現実味がない。国民民主党、立憲民主党、日本維新の会のうちいずれかの野党が、単独でいきなり自民党に対抗できる勢力になることは到底無理だし、ましてや政権奪取を遂げることなどは夢物語のレベルだ。そんなことを考えている各野党の政治家がいるのなら、彼ら彼女らは政治家を即刻辞めた方がいい。政治家としてのセンスは0だ。

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そして、野党の政治家は自党の利益だけを考えるのではなく、日本の政治のことを常に考えるべきだ。そうであれば、まずはとにかく野党全体の議席数、すなわち「自民党以外」の議席数を増やすことから始めなければならない。

内閣総理大臣の指名権を有し、政権の要となる衆議院議員の選挙制度は現在、小選挙区制がベースだ。一選挙区につき一人の当選者しか出さない小選挙区制は、基本的に二大政党が政権を争う仕組みである。つまり日本はアメリカやイギリスのような二大政党制を志向している。

ゆえに、歴史と伝統を有し、日本人的価値観を代表している感のある自民党という巨大な政党が一方に存在するのであれば、それに対抗する野党勢力も大きく一つにまとまらざるを得ない。日本の政治が二大政党制を前提にしている以上、自民党と「それ以外」という構図にならざるを得ず、有無を言わさず、野党を一つにしていくしかない。

野党議員はここを押さえる必要がある。日本の政治のことを考えるのであれば、「野党は一つ」なのである。

では、どう一つになるか。この実現プロセスが重要だ。

さっきも述べたが、今の各野党の支持率の状況で、どこかの野党の一つが一大勢力になる可能性はまずない。だからといって、いきなり今の各野党が合併して一つの政党になっても、有権者は支持しないだろう。そんな数合わせの政党には何の魅力も感じないからだ。

自由党の小沢一郎代表は、野党が一つになる必要性をずっと主張していた。その野党の最終形態は正しいにしても、小沢さんの考える実現プロセスが間違っていたがゆえに、野党の支持率は上がらなかったのだと思う。

小沢さんは、野党がすぐに一つの政党にまとまることを考えていたが、それでは有権者の心を捉えることはできない。単なる議員都合の数合わせにしか見えないからだ。民進党があれだけの騒動を経て、小池百合子東京都知事率いる希望の党や、その後の国民民主党、立憲民主党への分裂に至り、野党内の政治的主張の違いが見える化した。ここで国会議員の協議だけで再度一つにまとまっても、それは単なる民進党への逆戻りに過ぎず、国民にとっては何のことやらさっぱり分からない。

したがって、野党が一つにまとまっていくプロセスを「見える化」することこそが有権者からの支持を集めるポイントになると思う。

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