無料SIMを配ってユーザーを続々獲得
【田原】データはわかりました。そもそもどうして外国人は日本に来るんだろう。日本はおもしろいのかな?
【加藤】まず距離が近いことが大きいです。アジアの国々が経済発展して物質的に満たされると、次は海外旅行のニーズが高まります。そのときコト消費の代表格として、候補に挙がるのが、距離が近くて観光資源が豊富な日本というわけです。
【田原】日本は観光資源が豊富ですか。
【加藤】昔、父親の出張についていってポーランドを訪れたことがあります。そのときオプショナルツアーで連れていかれたのがザコパネという山間の町。「見ろ、山だ」と言われたのですが、正直、日本人にとっては何も珍しくないですよね。バリ島のウブドに行ったときもそう。人気ツアーの「ライステラスブレックファースト」を申し込んだら、棚田に連れていかれて朝ごはんを食べるだけ。それに3万円払って、私は何をしているのかと思いました(笑)。でも、私がそう感じたのも、日本は自然が豊かだから。森林率は約7割で、海岸線は世界第6位の長さがあり、南北に長いため魚種が豊富。さらに四季があるから食材の種類も多い。自分たちが考えている以上に、日本は観光向きです。
【田原】サービスの内容を具体的に教えてください。
【加藤】いまWAmazingと書かれた自販機のようなマシンを日本の20の空港に設置しています(18年9月現在)。このマシンに訪日外国人がスマホをかざすと、無料(15日間、500MB)で使えるSIMカードが出てくる。これを自分のスマホに差すと、訪日客は滞在中、無料でモバイルデータ通信ができます。
【田原】僕はよくわからないけど、外国人もWi-Fiを使えば通信できるんでしょう?
【加藤】日本はフリーWi-Fi環境があまり整っていません。モバイルデータ通信ならWi-Fi環境に関係なく使えるので訪日外国人にはとても喜ばれています。
【田原】でも、無料で提供したら儲かりませんね?
【加藤】日本での通信環境を無償提供するかわりに、事前にWAmazingのアプリをスマホにダウンロードして、個人情報を登録してもらいます。そのアプリでは、宿泊施設の予約ができたり、レジャーや買い物スポットの案内が読める。訪日外国人がそれらの施設を利用すると、送客の手数料がもらえる仕組みです。
【田原】アプリを使った旅行代理店か。アプリを入れてもらうかわりに、無料のSIMカードを配ってる。
【加藤】はい。いま台湾と香港を中心に17万人のユーザーがいて、ダウンロードしてくれた人のうち6~7割は、何らかのサービスを利用してくださっています。