【田原】どういうことですか?
【加藤】小泉内閣のときに日本は観光立国を目指すというステートメントがあって、2006年に観光立国推進基本法が成立しました。プライベートではその翌年に、第一子を出産。観光庁ができたときに職場に復帰しました。そのとき「じゃらん」でやっていたビジネスが地域活性に役立つのではないかと考えて、「じゃらんリサーチセンター」で研究員をやらせてもらうことにしたのです。
【田原】観光が地方創生になるということ?
【加藤】はい。地方が衰退しているのは若者が減っているからですが、若者が減っているのは少子化のせいではありません。どの自治体でも、人口流出の8~9割は19~24歳で起きています。つまり子どもはいても、進学や就職、結婚で出ていってしまうのです。かつては若者の流出を工場誘致で止めようとしていました。しかし、アジア諸国に工場が移り、国内の第二次産業は空洞化した。空洞化しないのはサービス業です。とくに観光業は、逆に地方のほうに人が来てくれる。観光業を盛り上げて、それで暮らしが成り立つことがわかれば、若者も地元にとどまってくれるんじゃないかと。
【田原】具体的には何をしたの?
【加藤】「雪マジ!19」というプロジェクトを立ち上げました。きっかけは長野県庁からの相談でした。スキー客が激減しているから集客のための提案が欲しいと。
【田原】それで提案したのが「雪マジ!19」?
【加藤】はい、日本人の19歳の人たちにリフト券を毎日無料で提供する。リフト1日券は、だいたい5000円弱。これを無料にすることで、スキー場とその周辺産業を活性化しましょうという事業でした。でも、県庁からは「スキー場会社にそんな提案をしたら、無料にする分の補助金を出せと言われる。だからできない」と却下されてしまって。仕方がないので、長野県ではなくリクルートの自主事業として全国でやることになりました。
【田原】スキー場の反応はどうでしたか?
【加藤】まず11年の4月にセミナーを開きました。東日本大震災直後でほとんどのスキー場が前倒しで営業を終了されていて、翌年以降の運営が不安だったからなのか、とても多くの方が集まってくれました。結局、初年度は約90カ所のスキー場が参加。1年目は様子見をされているところも多かったのですが、2年目以降はプリンスホテルなどの大手も参加してくれて、いまは約200カ所まで増えました。