何をすれば儲かるかなんて考えません

初めてアートに感動したのは小学生のとき、パリでクロード・モネの『日傘の女性』を見たときです。家には岡鹿之助の作品集があり、洋館の絵がお気に入りでした。幼少の頃から美術を身近に感じられる環境にあったのは、ちょっと嬉しかったですね。

(左)スマイルズ 代表取締役社長 遠山正道氏、(右)「Soup Stock Tokyo」をスタートさせた遠山氏が05年に作った長期事業計画書。タイトルは『スマイルズのある1日』で、「これから何をしたいか」が描かれている。売り上げ目標などの数字はない。

私はもともと商社にいたのですが、「会社」ではなく「自分」を主語にしたときに、心の底からやりたいことをやっていないことに気づきました。そこであらためて「やりたいこと」を考えて頭に浮かんだ、絵の個展をやりました。その経験が、今日のビジネスのスタイルにつながっています。

アーティストが作品を手がけるとき「何を作れば儲かるか」なんて考えません。自分が何を作りたいかがまずあって、それを世に問う。我々がやっているビジネスもそんな感覚です。

「Soup Stock Tokyo」を始めたときも、「女性がスープを飲んでいる風景」がインスピレーションとして浮かんで、それを具現化していきました。

当時出向していた日本ケンタッキー・フライド・チキンで事業の準備を進めていたのですが、会議室での試食会にお店の雰囲気を持ち込みたくて、キャンバスに描いた看板のようなものを作りました。私の中で「Soup Stock Tokyo」は、この時点で“作品”だったんです。

よく「スマイルズにはマーケティングがない」と言われますが、私たちのビジネスはすべて「やりたいこと」から始まっている。その意味でどの事業も、私たちの“作品”です。

ビジネスを始める根拠が外にあると、うまくいかなくなったときにもそのせいにしてしまったり、修正しようとすると踏ん張りがききません。

もちろん、それがひとりよがりではいけません。アートもそうですが、時代の大きなうねりを理解したうえで「自分はこうしよう」「ここを壊していこう」「原点に立ち返ろう」と試行錯誤していくのです。

自分たちのアイデアを形にして提案する。そうやってニーズを“探す”のではなく“作っていく”ことが、ビジネスがアートから学べる手法だと思います。