20代後半で「発達障害が原因によるうつ病」と診断された
家族からのプレッシャーで長男に厳しく当たることも増え、時には手をあげてしまうこともあったそうです。そのようなことが続いたためか、長男はいつしか学校に行かなくなってしまい、そのままひきこもるようになってしまいました。
「長男が不登校になった後、どこかに相談に行ったり病院に連れて行ったりするという発想そのものがありませんでした。いつの間にか家族は長男に対して見て見ぬふりをするようになってしまい、それがとても苦しかったです……」
当時を振り返る母親はとてもつらそうでした。
状況が変わったのは長男が20代後半を過ぎた頃。何気なく見ていたあるテレビ番組で発達障害のことを知りました。ひょっとしたら長男もそうかもしれない、ということで、家族で長男を何とか説得し、初めて病院へ行くことになりました。
診断の結果は、発達障害が原因によるうつ病。長男はうつ病を発症していました。
今でこそテレビや書籍、インターネットなどで発達障害の情報がたくさん発信されるようになり世間の認知も広がりつつありますが、当時は発達障害などの情報は手に入りづらかったように思われます。
そのため、周りから「親のしつけがなっていない」「本人にやる気がない」などといわれてしまうことも多かったことでしょう。このように本人や家族すら気が付かず、周りから「怠けている」「やる気がない」などと厳しいことを言われ、また「自分は何て駄目な人間なんだ」などと自分で自分を責め続けた結果、うつ病を患ってしまうケースは本当によく見受けられます。
「うつ病だから障害年金がもらえるということですよね?」
長男の現況をうかがった後、私は障害年金の概要についてご説明することにしました。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合、現役世代の方も含めて受けることができる年金、とされています。障害年金の対象となる病気やけがは、手足の障害などの他、精神障害、がん、糖尿病などの体の内部の障害も対象になります。精神障害であれば主なものに、統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害などが挙げられています。
すると母親は言いました。
「長男はうつ病だから、障害年金がもらえるということですよね?」
これはよくある質問のうちのひとつです。私はできるだけゆっくりとした口調で説明するように努めました。
「いえ、残念ながらうつ病の診断がついたからといって、必ずしも障害年金がもらえるわけではありません。あくまでもその病気によって、どの程度生活や仕事が制限されるかによるからです」
そう説明すると、母親はよくわからない、というような表情をしました。
それはごもっともだと思います。
そこで、母親もイメージが持てるように、脳梗塞が原因で肢体障害になってしまったケースで説明をすることにしました。