楽天参入のインパクト
こうした3社寡占構造に「待った」をかけるべく、2017年12月14日、4番目のMNOとして楽天が携帯電話事業への参入を発表したのである。
2018年4月には1.7GHz帯の周波数を付与され、すでに事業展開は可能になっている。順調にいけば、2019年10月からサービスを開始するとされる。
楽天の参入でMNOは4社体制となるわけだが、海外を見てみれば、携帯電話会社が4社体制の国は確かにその料金は安い。
あらためて、前回の記事を見てみれば、世界6都市の中でもロンドンとパリの料金が比較的安いことが分かる。データ容量が月5GBの場合、東京と比較して3割以上安い。イギリス、フランスそれぞれがMNO4社体制で、MNO間で激しい競争が起こっていることが、正にその理由である。
特にフランスは、MNO3社体制であったところに、第四のMNOであるFree社が2012年に参入し、業界に大きなインパクトを与えたことが知られている。もともとブロードバンドの事業者であったIliad社が、ブロードバンドの顧客基盤をてこに、市場へと参入してきたのだ。
これによって既存の携帯電話会社、たとえばOrange社は市場占有率を失い、市場全体が価格競争に直面することになった。これが消費者に大きな恩恵をもたらした。
4つめのキャリアが参入したことで大きく変わったフランス市場を、おそらく日本のMNOは、今ごろ注意深く分析していることだろう。
楽天携帯は「消費者の味方」になるのか
では楽天の携帯電話事業は成功するのだろうか?
同社は2025年までに6000億円を調達。2018年から2028年までの10年間で5263億円を基地局構築に充て、残りの金額は、楽天に割り当てられた1.7GHz帯を使う既存事業者の移行措置、いわば立ち退きのために使う計画だった。
しかし2018年8月6日の第2四半期決算発表の場において6000億円を下回る金額で設備投資が可能になることを明らかにし、2019年度には東京、名古屋、大阪を中心にネットワークを整備し、その後、主要都市に拡大していく計画を発表。結果として、2025年度に到達する前に、人口カバー率96%を達成するとしている。
既存のMNOの設備投資額が年間で5000~6000億円であることに鑑みれば、まるでマジックのような計画である。何か秘策があるのであろうか。