「4割程度下げられる余地がある」。この菅義偉官房長官の発言が波紋を広げている。日本の携帯電話料金は本当に高いのか。ジャーナリストの石川温氏は「総務省の資料にも『東京の通信料金は中位の水準』と書いてある。一部の料金プランを比較して『日本は高すぎる』と非難をするのは無理がある」と指摘する――。
8月29日、首相官邸で記者会見する菅義偉官房長官(写真=時事通信フォト)

携帯電話料金「4割値下げ」発言、キャリアからも苦言

菅官房長官の「携帯電話料金は4割、値下げの余地がある」発言が波紋を広げている。

この発言を聞いたキャリア関係者は「どうせ、総裁選や来年の参院選をにらんだ、国民への人気取りでしょ」と吐き捨てた。

また、ソフトバンクの榛葉淳副社長は「我々は十数年前にキャリア事業に参入した時からプライスリーダーとして自負を持って取り組んできた。(中略)プライスだけでなくクオリティもあり、トータルで判断、議論する必要があるだろう」と「4割値下げ」への圧力に対して、苦言を呈した。

ソフトバンクは8月29日、50GBのデータ容量に加えて、YouTubeなどの動画、FacebookやInstagramなどのSNSの使用でデータ容量を消費しない「ウルトラギガモンスター+」を発表。単なる値下げではなく、ユーザーが思う存分、スマホを使える環境を適正な料金で提供する方向性を示した。

政府が2015年以来の“口出し”

政府が携帯電話料金に口出しするのは、2015年に安倍首相が経済財政諮問会議におて「家計における通信料金の割合が高すぎる」と発言して以来だ。

当時、安倍首相の意向を受けて、総務省では有識者会議を開き、携帯電話市場における問題点を洗い出し、高額キャッシュバックや実質0円販売などの是正に着手したのだった。

一方、携帯電話各社も次々と新料金プランを投入。ソフトバンクが月間20GB使える「ギガモンスター(その後、50GBとなりウルトラギカモンスターに変更」、NTTドコモが月額1500円を割り引く「docomo with」、KDDIがデータ従量制の「ピタットプラン」を開始しているが、菅官房長官としては「ちっとも安くなっていない」とご立腹のようだ。