総理大臣が前代未聞の「携帯電話料金の値下げ」指示
2015年9月11日に開かれた経済財政諮問会議で、安倍晋三総理が「携帯電話料金の家計負担軽減が大きな課題」だとして、高市早苗総務大臣(当時)に対して料金引き下げの検討を指示した。
通信を所管する総務大臣ではなく、総理大臣自身が携帯電話の料金水準について言及するというのは異例のことであるし、自由化されているサービスの料金水準の高さに言及するのも異例のことである。
実は同日の経済財政諮問会議で、4人の民間議員が共同で提出した資料「経済の好循環の拡大・深化に向けたアジェンダ」の中で、家計支出に占める通信費の割合はこの10年で2割上昇したと指摘した。それが総理大臣自ら行った「指示」の背景となっている。
日本は携帯電話料金の選択肢が少ない
ただし、「高い」携帯電話料金は日本に限った話ではない。
総務省が2017年7月に発表した「電気通信サービスに係る内外価格差調査」によれば、スマートフォンを利用して5GBのデータ通信を利用する場合、各国主要都市の料金は東京が3760円、ニューヨークが6187円、ロンドンが2505円、パリが2554円、デュッセルドルフが3937円、ソウルが4640円となっている。
東京の料金は、世界6都市では上から4番目。決して高いわけではないことがわかる。
ただし、このデータは気を付けて扱う必要がある。なぜなら、対象としている料金は各国の主要な携帯電話会社の代表的な料金プランだが、それとは別に、欧米には多様な料金プランが存在しているからだ。
その代表的な例が先払い、つまりプリペイド型の通信料金である。プリペイド型を用いることで、通信料金の家計負担をコントロールしやすくなる。
他方、日本ではプリペイド方式はあまり広まっていない。かつて普及しかけたときに、携帯電話を用いた犯罪防止のために本人確認義務が厳しくなり、結果として後払いのほうが一般的となっている。
プリペイド型を含めて、多様な料金プランが準備されていることが、結果として消費者に割安感をもたらす。反対に、日本では安い料金を選びたいような消費者に対する選択肢が少ない。それこそが「携帯電話料金が高い」という印象を生み出していると著者は考えている。