消費者にとって料金が安いに越したことはない。しかし、それはそもそも市場の競争の中で決まるものであって、国が直接、価格政策に関与して決まるようなものではない。

もし法的根拠もなく「総理大臣の要請を受けたから」という理由で、本当に携帯電話各社が値下げを行えば、携帯電話会社の経営陣は株主代表訴訟を受けかねないだろう。

「MVNO対MNO」に意味はない

携帯電話市場には、先述したMNOと呼ばれる周波数免許を保有する携帯電話会社と、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)と呼ばれる、MNOから周波数帯域や回線を借り受けて再販する携帯電話会社の2種類が存在する。

現在の日本にはMNOとしてNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの三社しか存在せず、実質的な寡占市場となっていて、これが料金の高さの原因になっている。

MNOに参入するためには基地局インフラの整備、店舗網の整備等、多額の初期投資が必要になるため、その障壁は高い。そこでこれまで総務省はMVNOの普及を促し、MNOとMVNOとの間に競争関係を生み出そうとしてきた。

しかし、これは「筋のいい」政策とは言えない。

なぜならば、MNOとMVNOとの関係とは、JALのような航空会社とJTBのような旅行会社との関係のようなもの。似たようで、決して同じ業態ではないからだ。

MNOとMVNOは共存関係

航空会社は空港の発着枠の許可を受け、航空機等の機材に投資し、旅客サービスを運営している。その航空会社から座席を調達し、宿泊施設や各種のイベントとパッケージすることで、旅行サービスを販売するのが旅行会社だ。

それと同様、周波数免許を取得し、基地局やバックボーンの通信回線等のインフラに投資し、携帯電話サービスを提供するのがMNOである。そしてMNOから周波数帯域や回線を借り受けて、そこにソリューションやコンテンツ等の付加価値をつけ、パッケージ化してサービスを提供するのが、本来のMVNOの役割である。

つまりMNOはJALに、MVNOはJTBに近い。そもそもMNOとMVNOは共存関係にあるのだ。