「日本はキャッシュレス後進国。いろいろな国のメンバーがLINEの本社に来ますが、『日本に行くときは現金を持っていかなきゃ』みたいな心得がある。でもわれわれが海外に行くと、みんな当たり前のようにスマホで決済をしている。2020年の東京五輪も含めて、『おい、日本大丈夫か』と、日本人として危機感を覚えるんです」
「じゃあ、放っておいたら誰かが解決してくれるかというと、そうでもない。ある種の強い流れがないと、たぶんこの国は変わらない。7600万人というLINEのユーザーを奇跡的にも与えていただき、チャレンジできるポジションにいるのであれば、そこは明確な意思を込めて、われわれが社会を変えていくべきだと思いました」
舛田が言うように、日本はキャッシュレス後進国として知られている。経済産業省の資料によると、世界各国のキャッシュレス決済比率(2015年)は日本が18.4%。対して欧米は30~50%台で、中国は60%、クレジットカード比率が高い韓国は89%にも上る。
枯れた技術に抜かれた「おサイフケータイ」
とりわけ中国やインド、アフリカ諸国などでは、この数年でスマートフォン(モバイル)によるQRコード決済が爆発的に成長している。
昨年、日本銀行が公表した調査結果では、日本においてモバイル決済を利用していると答えた人は全体の6%にとどまっている。対して、参考値として「ケニアでは携帯電話加入者の約76.8%がモバイル決済を利用しているとの調査がある。また中国でも、都市部の消費者を対象に実施された調査によれば、98.3%が過去3カ月にモバイル決済を利用したと答えたとの報道もある」と紹介している。
中国ではインターネット大手のアリババ集団(阿里巴巴集団)とテンセント(騰訊控股)がそれぞれ展開するQRコード決済(前者が「アリペイ(Alipay)」、後者が「ウィーチャットペイ(WeChatPay)」)が国民のデファクトとなりつつあり、屋台の支払いから路上生活者への寄付までもが、スマホで完結しているという。支払いにはQRコードが印刷された紙ペラを掲示するだけ、という店舗も多い。
日本は「Suica」「Edy」といった非接触ICを利用した電子マネーや、それを携帯電話に入れた「おサイフケータイ」をいち早く導入した電子マネー先進国だった。だが、その決済高は近年、ほぼ横ばい。日本で2017年に利用された電子マネーの総額は5兆2000億円ほどだが、中国では1700兆円のモバイル決済があったという調査もある。QRコードという枯れた技術によって一気に追い抜かされた格好だ。
LINEは後進ながら、これを模範に日本でも一気にQRコード決済を普及させようと動いた。