まずは「聞く力」を鍛えることが大切
小学生になったら「問題を読んで解く」ことが始まるわけですが、幼児はまだ「読む」ことができません。ですから「しっかり聞く」ことがすべてです。
話す力も大事ですが、「聞く力」がないと、相手が何を思っているのか、どう考えているのか、正確に理解することは難しくなります。ですが、「聞く力」がしっかりあれば、相手を思いやることもできます。就学前にそうした基礎力をつけられるというのは、やってみなければわからなかった受験勉強のメリットでした。
もちろん、体力がついたことも大きな収穫です。「まず獣身を成して而して後に人心を養う」と慶應義塾の創設者、福澤諭吉が諭しているように、心を養うには、まずは獣のようなしっかりした体があってこそ、です。
このように考えると、幼児の受験勉強とは、結局は「小学校の基本」を身につけさせることなのだと痛感しました。
受験を通じて「人生の歩み方」が学べる
受験する・しない、受かる・受からないにかかわらず、「数を数えられるようになればいいよね」「人の話をちゃんと聞けるようになったらいいよね」「自分でちゃんと考えられるようになればいいよね」「体力がつくといいよね」……と、「これ、全部、そうなったら、すてきじゃない?」と思えたのです。
いま振り返ってみると、息子たちは「受験勉強をした」というよりも、「勉強のしかた」、もっといえば、「人生の歩み方」を学んでいたといってもいいのかもしれません。
受験で目指すべきことは、当然「合格」です。しかし、その過程でバランスの良い子どもが育ち、強さを秘めた子どもとなり、コミュニケーションがきちんととれる子どもとなれば、セルフコントロールが利く、がまんができる子どもになります。
受験を通して「人間力」が養われるといっても過言ではない――わたしが、確信をもってそう言えるのは、わが子をはじめ、わたしが向き合ってきた子どもたちが、それを証明してくれているからです。