※本稿は、『募集しない名門塾の 一流の教育法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
試行錯誤のなか「受験勉強」の素晴らしさに開眼
長男の「受験勉強」は、同世代のお子さんよりもずっと遅いスタートでした。とりあえず、書店でドリルを買ってやらせてみたのですが、何もできない。「どうしよう……。うちの子はアタマがよくないのかも」と落ち込みました。でも、やると決めたので後戻りはできません。
無我夢中で、わが子がどうしたら「できる」ようになるか、わたし自身の教え方の試行錯誤が始まりました。いわゆる進学塾みたいなところにも行きました。
よく「ちっちゃいときから、そんなに詰め込まなくても」と言われます。しかし、塾を見学したり、教材を一緒にやったり、私立小学校の情報を集めたりしているうちに、「こんなすてきなことがあるんだ!」と思うようになりました。
やってみると、「これを覚えていたらいいよね」「こんなふうに考えられるようになったらいいよね」と思えることばかりだったのです。
たとえば、ものを数えるときには、単に数えるのではなく、数え終えたものを右側に寄せるなりして、一つずつそろえて数えれば間違いなく数えられます。図形も、補助線を一本入れると、どんな形かわかりやすくなります。
受験勉強には学ぶための「基礎」が詰まっている
受験のための勉強は、そんなちょっとした「ものごとをわかりやすくするコツ」を学ぶことに等しく、それがわたしにとってはすごく新鮮でした。なるほど、「受験勉強」をすると、こんなに「いいこと」が身につくのだな、と。
ものの考え方の基礎にもなるし、これから小学校で国語・算数・理科・社会、そのほかの教科を学ぶにあたっても、すべての元になっている。そう感じたのです。
そうした「お勉強」的なことは、やればやるだけ身につきます。心配だった息子も、次第に理解できるようになりました。さらに、受験勉強をやればやるほど、知れば知るほど、すごくいいなと思ったのは、「人の話をしっかり聞ける」ようになったことです。
小学校受験では、「ペーパー」「運動」「巧緻性」など、さまざまな観点からのテストが行われますが、どれをやるにしても、まず、「人の話をしっかり聞くこと」ができていなければなりません。
そして、言われたことを、言われたとおりにできるかが、合否の分かれ道となります。受験の世界では「指示行動」(人から何かを聞いて、それにしたがって行動する)といいますが、それができるようになったのです。