慶應義塾幼稚舎をはじめ名門小学校への合格者を多数輩出しながら、PRも募集もしない“幻のお受験塾”として保護者や受験関係者から注目を集めてきた「つくし会」。わが子の小学校受験をきっかけに同会を設立し、20年以上にわたって幼児教育に取り組んできた石井代表は、「小学校受験は子どもの『人間力』を養い、その後の人生を豊かにする」と語る。その理由とは――。

※本稿は、『募集しない名門塾の 一流の教育法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

試行錯誤のなか「受験勉強」の素晴らしさに開眼

長男の「受験勉強」は、同世代のお子さんよりもずっと遅いスタートでした。とりあえず、書店でドリルを買ってやらせてみたのですが、何もできない。「どうしよう……。うちの子はアタマがよくないのかも」と落ち込みました。でも、やると決めたので後戻りはできません。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/JGalione)

無我夢中で、わが子がどうしたら「できる」ようになるか、わたし自身の教え方の試行錯誤が始まりました。いわゆる進学塾みたいなところにも行きました。

よく「ちっちゃいときから、そんなに詰め込まなくても」と言われます。しかし、塾を見学したり、教材を一緒にやったり、私立小学校の情報を集めたりしているうちに、「こんなすてきなことがあるんだ!」と思うようになりました。

やってみると、「これを覚えていたらいいよね」「こんなふうに考えられるようになったらいいよね」と思えることばかりだったのです。

たとえば、ものを数えるときには、単に数えるのではなく、数え終えたものを右側に寄せるなりして、一つずつそろえて数えれば間違いなく数えられます。図形も、補助線を一本入れると、どんな形かわかりやすくなります。

受験勉強には学ぶための「基礎」が詰まっている

受験のための勉強は、そんなちょっとした「ものごとをわかりやすくするコツ」を学ぶことに等しく、それがわたしにとってはすごく新鮮でした。なるほど、「受験勉強」をすると、こんなに「いいこと」が身につくのだな、と。

ものの考え方の基礎にもなるし、これから小学校で国語・算数・理科・社会、そのほかの教科を学ぶにあたっても、すべての元になっている。そう感じたのです。

そうした「お勉強」的なことは、やればやるだけ身につきます。心配だった息子も、次第に理解できるようになりました。さらに、受験勉強をやればやるほど、知れば知るほど、すごくいいなと思ったのは、「人の話をしっかり聞ける」ようになったことです。

小学校受験では、「ペーパー」「運動」「巧緻性」など、さまざまな観点からのテストが行われますが、どれをやるにしても、まず、「人の話をしっかり聞くこと」ができていなければなりません。

そして、言われたことを、言われたとおりにできるかが、合否の分かれ道となります。受験の世界では「指示行動」(人から何かを聞いて、それにしたがって行動する)といいますが、それができるようになったのです。