受験はわが子への理解を深め、子どもの人生を豊かにする

息子の受験を終え、その実体験から、わたしは幼児教育にとても関心をもつようになりました。家業としていた進学塾では、小・中学生向けの受験ノウハウはありましたが、でも、やっぱり基本は幼児時代です。小・中学生よりも、就学前から導いたほうがぜったいにいい。わが子を受験させて、それがより鮮明にわかったのはたしかでした。

就学前の6歳までは、保育園や幼稚園などに通園していたとしても、送迎には親が必要です。

つまり、そのころの子どもは、ほぼ100%親に依存しています。逆にいえば、親も子どもとベタベタできるのはこの時期まで。

この時期に、受験という親子共通目標を設定することで、さまざまなことを一緒に体験でき、かつ、わが子のことをよく知ることができます。

「こんなことをするの?」
「こんなふうに考えていたの?」
「こんなひらめきがあるの?」
「これが得意なんだね」

そんなふうに、わが子への理解を深めていくだけでなく、子どもにとっても親子で一緒に体験したことは、かけがえのない思い出になるはずです。その後の人生をとても豊かにしてくれるでしょう。

就学前のわずかな期間が親子の絆を深めるチャンス

親子の絆もものすごく強くなります。中学受験でも、風邪をひかないように気を配ったり、勉強できる環境を整えたりと、親は何かとお世話しますが、幼児の場合は100%親がやらねばなりません。常に親がそばにいるわけですから、その中で会話も増えます。一つの目標に向かって一緒に頑張るわけですから、絆が強まって当然です。

受験勉強という経験は、小さなことの積み重ねです。丸がうまく書けるようになったとか、犬の絵が上手に描けるようになったとか、やればやっただけ上達するので、お父さんお母さんにほめられます。子どもが自信を持つ、いいきっかけにもなります。

親子の密な時間は、小学校に入る前の比較的時間のあるこの時期だからこそ。そのチャンスを逃してしまうのはもったいないなあ、と自分の経験から思うのです。

石井美恵子(いしい・みえこ)
つくし会幼児進学教室 代表
息子二人を慶應義塾幼稚舎に入学させた経験をもとに、1992年、小学校お受験を専門にする幼児塾「つくし会」を設立。以来四半世紀以上にわたり、独自の指導法で最難関といわれる慶應義塾幼稚舎をはじめ、早稲田実業、青山学院、学習院、聖心などの初等科に毎年多くの合格者を輩出している。
(写真=iStock.com)
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