欧州に比べて男女格差が根深い米国でも男性問題は注目されていて、「男性学」を専門とする修士課程が、2015年にニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に開設され話題になりました。

男性学とは「男性性研究(masculinitystudies)」と呼ばれることもある学問で、男性ゆえに抱えるさまざまな問題を研究する学問です。

「女性学(women’sstudies)」は1960年代のアメリカで、女性解放運動と大学改革運動が結ビつき大きく発展しましたが、男性学は1991年に米国男性学協会が設立されたのをきっかけに、関心が高まりました。女性が社会進出し、女性の社会的・経済的地位が上がったことで、男性でいることの難しさを味わっている男性が増えたことが背景にあります。女性の社会進出が男性の悲鳴につながるとは、なんとも皮肉です。

男性も「男に生まれるのではなく、男になる」

「男だから」弱音を吐かず、長時間労働に耐え、競争社会に翻弄される。「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」とはシモーヌ・ド・ヴォーヴォワールの有名な言葉ですが、男もまた「男に生まれるのではなく、男になる」。女性たちが「女」を演じきれず「女らしくない」と批判される悔しさを、「男」たちも味わっています。

私は何も女性たちに、「自分たちの苦悩ばかり言うな!」と言っているわけではありません。男性たちの声にならない声にも気づく、しなやかさを持ってほしいのです。と同時に、男女二分法のジェンダー・ステレオタイプは、性的マイノリティーの人たちの生きづらさをもたらしていることも、忘れないでほしいです。

河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輪に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。
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