マイクロソフトには「fail fast learn fast」(素早く失敗し、素早く学ぶ)という言葉があります。つまり素早い意思決定と試行錯誤が重要だということです。われわれは「fast」ということだけに集中しているわけではありません。学習してアクションを起こすことに集中すべきだと考えているのです。

時間をかけて計画を練り、新しいプロジェクトに取りかかったり、製品をつくったりするのではなく、まずは、とりあえずプロトタイプをつくってみて、修正を繰り返す。そういった、短いサイクルを続けています。世界のビジネスのスピードは速くなる一方です。日本の企業にとっても経営のヒントになるのではないでしょうか。

言語の違いは気にするな

私は25年間、ずっとIT業界で仕事をしてきました。その経験から理解したのは、テクノロジーをその国の文化に合わせてうまく活用していくということが非常に重要であるということです。

たとえば、日本という国が持っている価値観、質の高さ、テクノロジー。それぞれに非常に長い歴史がある。それらを、否定してはいけません。

私は、日本企業にとっての、あるいは日本における、ビジネスのチャンスはとても大きいと感じています。特に中堅企業にとっては非常な好機でしょう。ただ、日本の企業の方々は必ずしも国外を意識していらっしゃらないのではないでしょうか。

おそらく、グローバル化にあたっての不安要素のひとつとして、言語の違いが挙げられると思います。しかし、AIによる即時翻訳が間もなく完成すると言われているのです。すでにスカイプにはリアルタイム翻訳が実装されていますし、これからのコミュニケーションツールにはマルチランゲージ機能がついてくることでしょう。

ですから、そんなに言葉のことを心配する必要はありません。日本企業の皆さんへ何かアドバイスすることがあるとすれば、「海外にどんどん出ていって、ソリューションを展開してゆく」。これに尽きます。

ラルフ・ハウプター(Ralph Haupter)
マイクロソフトアジア代表
ドイツ・マルクドルフ出身。IBMを経て2005年にマイクロソフト入社。09年ドイツ支社CEO、12年中国支社CEO、16年より現職。スキーとセーリングが趣味。
(構成=梁 観児 撮影=村上庄吾)
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