英語の勉強になる映画ならない映画

裏を返すと、教材として望ましいのは平易で、日常的に「使える」表現が出てくる作品ということになる。リアルな日常会話が多い現代劇といえば、映画「ホーム・アローン」やドラマ「フレンズ」「フルハウス」などは定番中の定番だ。「自分と同じ業種職種をテーマにした作品もいいかもしれません」と桜井氏。例えばファッション関係者が映画「プラダを着た悪魔」を見るという具合。なるほど、それなら興味が湧きそうだ。

「私の周りには、比較的、映画よりドラマで勉強したという人間が多いですね。ドラマは日常を題材にした作品が多いですし、真似できるフレーズが豊富です。そもそも映画1本は1時間半ほど。それよりドラマ1シリーズに出てくるシチュエーションのほうが豊富で、偏りがありません。例えば『アグリー・ベティ』というドラマは、出版社で働く編集長のアシスタントが主人公。いつもビジネスが絡んでいますし、セリフもクリアで聞き取りやすいですよ」

晴れて初級中級の英語に慣れたら、難度を上げていこう。ドラマ「SUITS/スーツ」は大手法律事務所が舞台なので、使えるビジネス英語が頻出する。理系オタクたちによるコメディ「ビッグバン☆セオリー」は、知的だがズレた会話が笑いを誘う。

結論として、初級者である筆者は、以前夢中になって何度も観たドラマ「フレンズ」を日本語字幕で見返したのち、もう1度英語字幕で視聴するという無難なスタイルに落ち着いた。早すぎず遅すぎずの英語、いちいち感情豊かな登場人物、そして補助輪がわりの英語字幕のおかげで、半分ほど聞き取れた。

「面白いから続くというのが映像のよさです。聞き流していても耳は慣れてくるはず。映像で覚えたフレーズをどこかで使ってみるとスピーキングの訓練にもなります。それからもう1つ、本などにはないリアリティある会話に触れられるのは映像ならでは。登場人物の感情の動き、海外の人の物の考え方、話の展開などを体感できるはずですよ」

▼職種別英語学習に向いている海外ドラマ・映画
事務職/「アグリー・ベティ」
ファッション誌の編集長アシスタントに採用されたベティ。垢抜けないがポジティブなベティは少しずづ認められていく。
飲食業/「幸せのレシピ」
レストランの料理長を務める女性が主人公。食材や調理方法など、料理関連の英語が頻出。キャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演。
法務/「SUITS/スーツ」
ニューヨークの法律事務所を舞台に、スゴ腕弁護士のハーヴィーと、彼の相棒となる天才青年マイクが活躍する人気ドラマ。
エディター/「プラダを着た悪魔」
ジャーナリスト志望の主人公が、人気ファッション誌のカリスマ編集長の無理難題に振り回される。アン・ハサウェイ主演。
エンジニア/「シリコンバレー」
シリコンバレーで一攫千金を狙う若きプログラマーの成長を描くコメディ。IT系の「あるある」がたっぷり。
金融業/「ウルフ・オブ・ウォールストリート」
ウォール街で年収49億円を得るほど大成功した男の栄枯盛衰を描く。レオナルド・ディカプリオ主演。
桜井徹二
日本映像翻訳アカデミー講師
 
(撮影=和田佳久 写真=PIXTA)
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