退職金、同期入社で最大1800万円差

大企業の場合も企業年金があるからと安心してはいられない。企業年金と一体となった退職金が3000万円といってもあくまで平均額。実際は個々の社員によって退職金は違う。従来の退職金額は「退職時基本給×勤続年数×退職事由別係数(自己都合もしくは会社都合)」という数式で算出され、入社年次が一緒であれば、ほぼ同じ退職金をもらうことができた。しかし、今では勤続年数など年功ではなく、社員の等級・職位や業績を反映した成果型のポイント制退職金制度を導入する企業が増えている。

佐藤担当部長は「退職時の基本給を算定基礎とした場合、若い頃の成果は考慮されにくい。勤続ポイントだけではなく、昇格・昇級ポイント、業績ポイントをそのつど付与し、ポイントを積み上げていくポイント制退職金が近年では多く、大企業の主流になっている。したがって同期入社でも退職金は全然違う」と語る。ポイント制の退職金額は累積ポイント×ポイント単価という単純計算で決まる。

実際に経団連の調査(17年6月)ではポイント制を導入している企業が81.6%と最も多い。ではどれぐらいの格差がつくのか。ある大手電機メーカーでは昇格ポイントと勤続ポイント、業績ポイントがあり、1ポイントの単価は9000円。同期で入社し、最も昇進が早かった社員の退職金額は2856万円。昇進が遅い社員は1091万円。じつに2.6倍以上の格差がついている。

対象的なのが公務員の退職金だ。公務員は以前の民間企業と同様に基本は年功であり、公務員の8割を占める地方公務員の退職金は約2300万円(行政職)だ。

企業年金は公的年金を補完する老後の所得保障のための制度といわれるが、存在感が薄れつつある。日本の年金制度は「3階建て」といわれ、1階が国民年金、2階が厚生年金でここまでが公的年金で、3階が企業年金になる。自営業者は国民年金しかもらえないが、会社員は国民年金と厚生年金が支給され、その合計平均月額は22万1277円(厚生労働省、17年度)。このなかには専業主婦の妻の国民年金の分も含まれる。保険料未納期間があるとこの金額よりも減るが、それでも夫婦で20万円ちょっとでは老後の生活は厳しいだろう。頼りになるのは企業年金だが、確定給付年金の1人当たりの平均年金月額は約7万円(厚生労働省調べ)。合計で30万円にも満たない。もちろん企業・個人間の格差も大きい。