若い人は、メールで職場が殺風景になることに危機感がない

また若い人たちは、ITの活用に対するスタンスも我々の世代とは違います。例えば、みなさんの会社で、隣の席の人にまでメールを打って連絡するようなことはないでしょうか。たしかに、メールにはいい面があります。相手との面倒なアポイントの調整がいらないので、時間の有効活用ができます。また、相手の顔色や表情を見ないほうが、言いたいことをストレートに伝えられるという面もあります。ただ、一方通行なので、メールの表現によっては人を傷つけていることがあってもわからないし、人間関係が希薄化することにもなりかねません。私たちの世代では隣の席の人にメールを送ることは考えられませんが、ITに溶け込んでいける若い人たちは、メールによって職場が殺風景で機械的になっていることに、危機感を感じていないようです。

しかし、IT化するだけで本当にいいのかという問題意識は、絶えず持っている必要があると思います。もちろん、例えば自動車会社の完成車検査などは、IT化によって透明化され、利便性も向上していることは間違いありません。ですから、IT化によって仕事のやり方を変えることを躊躇したり、恐れたりする必要はありませんが、変えてはいけないもの、あるいは変えながらも残していく大切なものは必ずあるはずです。人間の目や力で正しく判断し処理しなければいけない部分は、守っていかなければなりません。

世代間ギャップは意識改革で埋める

当社は、過去の不祥事を繰り返さないためにも、その原因が何であったのかをしっかり認識をしておかなければなりません。先般、開発拠点のある岡崎製作所に「過ちに学ぶ研修室」を開設したのもそのためです。

ただ、先輩が持っている貴重な経験を部下へ教え、伝えるということも簡単ではありません。それは、そもそもコミュニケーションに使う言葉1つ取っても、昔とは違うからです。例えば、社内の書類などは、最近は英語を多く使うようになり、日本語の書き方がまったく参考にならなくなりました。それに、社内用語も簡単に使えなくなりました。例えば「KY」という言葉。世間では「空気が読めない」という意味ですが、当社の社内用語では「危険予知」の意味です。社内の文書でも3文字以上のカタカナ表記では最後の「ー」を省略し、例えば「リスキー」を「リスキ」とするルールがありました。先輩が持つ経験を部下に伝えていくには、そういったコミュニケーションのローカルルールから変えていく必要があると考えています。

そしてやはり大事なのは、メールばかりで連絡や決裁をするのではなく、直接お互いの顔を見ながらコミュニケーションをするということです。当社は年内に今の本社から新しいビルに引っ越す予定ですが、オフィス内での風通しをよくするために、上下階の移動にはエレベーターではなく階段を利用するような造りにしたり、休憩時間に社員が集まるカフェテリアも設けたりする予定です。これらの案は、若手の社員たちが、プロジェクトチームを編成して提案したものです。