また、中枢分野の製造工程を支える素材、部品、装置などの基盤でも、日本企業は極めて優れた製品を提供しています。これこそが日本企業の強みであり、ナンバーワンではなく、オンリーワンで成功を収めている最大の理由です。たしかに日本は、パソコンの頭脳にあたるCPU(中央演算処理装置)の開発競争では敗れましたが、その周辺および基盤の分野において、圧倒的な強みを持っているのです。

このことの最大のメリットは、価格競争にさらされるリスクが極めて低いことです。CPUや半導体は、世界的に価格競争が非常に激しい分野です。半導体といえばかつては日本のお家芸のようなもので、世界の半導体シェアの50パーセントを日本企業が占めていましたが、今や8パーセント程度までシェア率を減少させています。最後に残った大手半導体メーカーである東芝ですら、半導体部門の売却を余儀なくされました。

日本にしかできない技術を用いる

50パーセントものシェアを握っていた1990年当時に比べて、為替レートは大幅な円高になり、日本の半導体は世界市場における価格競争力を失いました。もちろん、その間に台湾などアジア新興国が半導体市場に参入し、競争が一段と激化したことも、価格競争に一段と拍車をかけました。

いずれにしても、半導体そのものは厳しい価格競争にさらされ、日本の半導体メーカーにとっては、儲からないビジネスになってしまったのです。このように半導体自体の価格競争は激しく、利幅の薄い商売になってしまいましたが、日本がオンリーワンとして認められている半導体の周辺ビジネスは、そもそも日本にしかできない技術を用いているので、価格競争にさらされずに済んでいます。

この周辺分野の強みを具体的に挙げると、たとえば半導体の素材となるウエハーは、日本メーカーの独壇場です。日本企業は、一番市場が大きいエレクトロニクス機器の本体で、世界ナンバーワンのシェアをとることには失敗しました。しかし、周辺と基盤の分野において、他国の追随を許さないほどの高い技術力を身につけ、見事に生き延びているのです。日本企業の強みは、余人をもって代えがたいところにあるのです。